2015年10月29日木曜日

エール!(2014)

字幕翻訳:吉田由紀子


~声~ 


〇はじめに 
 試写会にて鑑賞。 


〇想起する作品 
 「陽のあたる教室」(1995)

〇こんな話
 声を聴く。声を届ける。


〇声
 声とはいったい何なのか。  

 娘以外耳が聴こえない家族。はじめに生活音の粗さ、雑さが聴こえてくる。彼らには聴こえていないが、娘と我々はその様を観ると同時に聴くのである。そして彼らの意思伝達の手段、手話。どこか大げさな身振り手振り。表情やその動作の強弱が相まって何かしらを伝えようとする。耳の聴こえる娘や我々とのギャップが、間の取り方の違いが、最初の挨拶におけるすれ違いでも描かれている。

 彼らの生活を観ていく中で、1つ浮かび上がってくる問題がある。唯一家族の中で耳の聴こえる娘ポーラ。仕事や生活において、他者とのコミュニケーションは必要不可欠。しかし手話を日常的に使用し且つ理解できる者は限られている。そこを埋めるために間に入ってくるのが彼女。通訳を担っている。両者の言葉が彼女を通して伝えられることとなる。  

 問題はだ、通訳の彼女の意思はどこにあるのかということだ。通訳ってのがそもそも特殊な役割でして。本来なら発された言葉に対して自らの感情を介さない。言葉(単語)は選ぶだろうが、その言語におけるニュアンスの通り別言語に訳す。しかしポーラの場合は、時に彼女の配慮があり、その関係の均衡を保っていた。手話、声とどちらにしかわからないように彼女の意思を介しやりくりしていた。この配慮の部分は彼女にしかわからない、見えてこない。家族の知らない、関与しないところでの電話での交渉は・・・。歌の練習を家族に伝えられない事態もこれの後押しになっている。  

 そんな時に出会うのが歌なのである。彼女の歌を評価してくれる、聴いてくれる者の存在。彼女は歌に何を見出すのか。彼女の歌の才能は我々には明らか。では耳の聴こえない家族にはどうなのか。



 声とはいったい何なのか。ただの発声なのか。発声が届かない者にはその声は届かないのか。彼女はいったいどのようにして声を届けるのか。
・・・ここの繋げ方がうまかった。
 

 村長選におけるインタビューの場面。良い意味で要約、悪い意味でいい加減に伝える。耳の聴こえる者と、聴こえない者の間で板挟みにあっていたポーラ。この辺りから彼女の意思が家族に見えるカタチとなってくる。家族はポーラを、ポーラは家族を必要としており、自負がある。

 
 

 耳の聴こえる観衆の中の、耳の聴こえない家族。手拍子や拍手、歓声に包まれる中の彼らの表情や仕草から、いったい彼らにはどのように聴こえているのかということが想起される。ここの比較は良く表現されていたように思う。彼ら目線に立たせるのも粋だろう。

 最後の件の前に、ポーラの歌の響きを、声を捉えようとする父親の姿があった。これがまた素敵なんだ。ここまでにコミカルな場面があるからこそなんだよな。


 最後彼女は彼女なりに歌声を届けようとする。歌詞がまた胸を打つんだ。




 


 頻りに性の問題が。これは障害者に対する差別や偏見っていったところとの関連なのだろう、か。

 初潮は1つの彼女の位置づけだったんですよね。女になった。しかし母親にとっては子どものままだと。あとは障害だけでなく、迫害は存在すると。
 肌の色に関しても言及してたな・・・。
 




〇余談(偏見が入りますご注意を)
 映画の見方なんて人それぞれですがね。この映画の良さであり、狙ってるところなのでしょうがね。障害をポジティブに捉えている彼らですし・・・

 頻りに笑ってる方がいらっしゃいました。物語の全容見えなさすぎではないでしょうか。単発の笑いに釣られ過ぎです。その画だけで判断しすぎです。コミカルな場面は、声という部分でラストにつながるであろうシーンということは頻りに示唆されていました。全体の構図をもっと頭に描くべきですよ。
・・・読めないもんかな~、これは押さえるべきポイントだなと。ワロてる場合ちゃうんやけどな~、わからん。

 ま、この辺のギャップを私が笑えるように伝えられれば良かったんですがね・・・・ 観衆の笑い声がただのノイズにしか聴こえなかったんですよね。つい笑ってしまうってより、必死に笑おうとしている感じがしたんですよ。周りに負けじと・・・。いけね、不満になっちまった。失敬失敬。
 この辺の勝手な価値観が映画を狭き門にしてる感じがするな。周知しようとしてる身でありながらいただけないな。もっと広い心を持たねば。

 大変失礼しました。
・・・じゃあ書くなよ・・・。



〇最後に
 コミカルな場面が目立つが、これが家族が彼女を、彼女が家族を思いやっての行動なのだとしっかりと印象付け、しんみりとオチにつなげたのは感動した。
 是非是非、笑って、笑って、笑って、感動して欲しい作品です。この気持ちに嘘偽り、邪な気持ちはございません。

 ではでは・・・


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