2014年1月31日金曜日

キャプテン・フィリップス

キャプテン・フィリップスキャプテン・フィリップス (2013)

【監督】ポール・グリーングラス
【出演】トム・ハンクス / キャサリン・キーナー / マックス・マーティーニー / クリス・マルキー / バーカッド・アブディ / バーカッド・アブディラマン / ファイサル・アメッド / マハット・M・アリ / マイケル・チャーナス


★★ [40点]「キャプテン・ムセ」

ハリソン・フォード主演の対テロリスト映画と大差ない。

キャプテン・フィリップス側だけでなく海賊側にも焦点を当て、二者の対立を描いたのはよかった。そこに宣伝との差異が観られ、ただの感動ものではないと私的に路線変更。

物語の入り方としてフィリップス視点、海賊視点と両方から始まるから否が応にも海賊側への同情が誘われる。生きるために仕方なくやっている。海賊の船長も自らがやろうとしてやっているわけではなく、しかしやるからにはその仕事を全うしようとそういう境遇。
船長と船員の緊張感の差や、フィリップス側、海賊側の必死さの対比。統制された船員と急ごしらえの海賊。その辺からくる緊迫感には見ごたえがあった。

○実話というウリ
アメリカ内部だけの話ならまだよかった。しかし、海賊というある種世界情勢に手を出すとなるとこの描き方はいただけない。
こういうノンフィクション映画というのは、
事後で全てが把握されているからこそ美談にできるのであって、事が起こっている最中ではひたすらに盲目である。その中でいかにキャプテン・フィリップスは戦ったのか、という方が緊張感は出たであろうが、それだとただのアクション映画と変わらない。結果がわかっていることと、全容を把握されているという理由で感動ものにするのは致し方のないことではあるのだが、結局のところこの映画ではキャプテン・フィリップスの葛藤というよりも、海賊(テロリスト)に対して、アメリカ軍(SEALS)の力を誇示したいだけという風に観えてしまう。

境遇の違いというのを描き、この対峙する者たちを分けたのはほんの少しの差であること。それを描くことでどちらにも同情の余地を与え、偏りなく観せようとしているのかもしれないが、私個人の意見としては結局アメリカという優位な立場だからこそ描けたことで、別に同情は求めていないというか、その同情自体が優位な立場の顕示というか。そういう私もそうなんですが・・・。なんか皮肉めいて感じてしまう自分がいる。

アメリカというのは侵略される側としてこういう映画を撮ることで感動をとろうとする。確かに侵略される側から描くことで、悪とされるものに立ち向かう勇気というか正義はかっこよく、そして見習うべき姿勢として見ることができる。しかし、それはその事件の時点(リアルタイム)での見方でしかない。その時点ではそう見えるかもしれないが、長い目で見ればこういう情勢を作り出したのは、原因の多くは、アメリカにあるのであって、もともと侵略をしたのはアメリカであるということを忘れてはならない。それでいて悪は排除やら悪事を働いたら同じ境遇に合わせるべきだとかいう映画を好むわけで・・・、その考えで言ったらこの映画は海賊側からいったら妥当なわけで。歴史的に正悪をプラマイゼロの方向へ向かわせようとしてる的な。

まあ、つまるところアメリカという優位な立場だから描けた茶番劇とでもいいましょうか。そんな作品だと私は感じてしまった。

あとムセの「俺はアメリカへ行く」という件を最後に皮肉に持っていくという展開も・・・、笑えない。

〇最後に
この作品をただの感動ものでは終わらせたくはない。そのためにも海賊役の方たちにアカデミー賞主演・助演男優賞を取って欲しくある。


Posted by foxtrot on 2013/12/26 with ぴあ映画生活

2014年1月25日土曜日

キャリー

キャリーキャリー (2013)

【監督】キンバリー・ピアース
【出演】クロエ・グレース・モレッツ / ジュディ・グリア / ポーシャ・ダブルデイ / アレックス・ラッセル / カブリエラ・ワイルド / アンセル・エルゴート / ジュリアン・ムーア


★★★ [60点]「キュートとセクシーの狭間、揺れ動く」

クロエ・グレース・モレッツのキュートさとセクシーさのギャップというか対比、それを楽しむ映画です。

○キュート(地味さも含む)要素    一人の娘として
無知加減でそれを演出。
・生理を知らない。血を見てパニック。
・パソコンの知識やタイピング技術の無さ(You Tubeの全画面表示切り替えを教えてもらうなど)。
・超能力に興味津津な様子。

○セクシー要素    一人の女として
基本的に後半全部ですね。最後は娘に戻りますが。
・ドレスを作る。そのドレスの着こなし。ピンク色。
・母親への反抗も入るのかな・・・。
ここで寸法を測るシーンを入れればいいのにと少し下心を出してみます。

○最後に
終わり方が1976年に制作されたものと弱冠異なり、テーマに対しての受け取り方が変わると思います。テーマを「思春期・いじめ・集団心理」を総じての「キャリー」として観るのと、ただ単に「クロエ」と観るとで。どこに重きを置くのかで全然変わってくると思います。「キャリー」という物語は前者のテーマの方が重要視されるべきだとは思いますが、「クロエ」好きであればこれで良いんではないでしょうか。


Posted by foxtrot on 2014/01/24 with ぴあ映画生活

2014年1月23日木曜日

グランド・イリュージョン

グランド・イリュージョングランド・イリュージョン (2013)

【監督】ルイ・リテリエ
【出演】ジェシー・アイゼンバ-グ / マーク・ラファロ / ウディ・ハレルソン / メラニー・ロラン / アイラ・フィッシャー / デイヴ・フランコ / コモン / マイケル・ケイン / モーガン・フリーマン


★★★☆ [70点]「短絡的思考」

短絡的思考によるミスダィレクションに直面させてくれる映画。この短絡的思考は効率的勉強法が重要視される現在の教育体制で否が応にも身についてしまっている。決して悪く言っているわけではない。

○基本的な騙される心理として
いかにダイナミックなマジックでもタネは地道で地味であるのに対して、それを見抜こうとする者たちの思考はそのマジックに直結するようなもの(洗練された科学技術やら)がタネであろうというショートカットを優先する。それゆえに誰もが思いつく(これは言い過ぎかもしれないが)ようなトリックでも見抜くことができなくなる。
・以下持論
(今日の教育は学年が進むごとに)九九を覚えさせる(に始まり)ように答えのアプローチを楽しむというより、より難しい答えを求めるためにその肝心のアプローチを短くしようとしがちで、基礎・基本というよりそこからの発展・応用を重要視しがちである。例としては方程式(この映画で言うタネ)を導くことよりもその方程式で問題を解いてゆくことを優先するということ。問題を提示された際にどの方程式に当てはまるのだろうとまず考えてしまう。つまり問題をパターン化して解いているのだ。そのパターンというのが短絡的思考という問題のところで、ある問題に対しての見方が一方的になってしまう。それゆえに少しそのパターンをひねられると間違った方程式を導きださせられ、こういった話には騙されてしまう。実際には方程式に当てはめるということだけではなくその方程式へのアプローチという段階が必要で、ゆえにそこをカットさせることこそが人を騙すトリックといえる。

経験という情報のるつぼ。これも思考というのに大きく影響する。解決法として思いつくのは今までに陥った状況と現在の状況とを照らし合わせてそれと一番近い方法を探し出すことだろう。これが現れるとこの手の映画に関しては過去のものと現在のものでの対比が行われ、もう騙されるものかと疑り深くなる。そうなるほど情報の選別が難しくなり、思考がより難解な方に進む。

〇総括
騙されるということが気持ちよく感じられる作品でした。基本的にこの手の作品は後味が悪いものが多いのですがそれもなく、しかしすっきりできるからこそ何か悔しくもあり最後に負け惜しみ的解釈すらしてしまいました。

○余談
女性捜査官が妙にセクシー。首元が開いてる衣装だからなのだが、首筋らへんにホクロが二つあってそれが気になって仕方がない。この注意を引く演出もミスダイレクションなのか!?・・・と。


Posted by foxtrot on 2013/12/26 with ぴあ映画生活

オーバードライヴ

オーバードライヴオーバードライヴ (2013)

【監督】リック・ローマン・ウォー
【出演】ドウェイン・ジョンソン / スーザン・サランドン / ジョン・バーンサル / バリー・ペッパー / ベンジャミン・ブラット


★★☆ [50点]「映画のウリと実際」

麻薬カルテルというからくりと、麻薬を取り締まる法律にハまってしまった息子を救出すべく父親が奮闘するお話。

〇からくりとは

・カルテル

麻薬組織の取引において危険なものは身内を使わず、お金や薬に飢えている学生を使い捨てとしてコキ使う。そうすることで組織との繋がりを悟られずに済む。

・法律

売買に関わっている仲間を密告すれば減刑が許される。それに利用される者たちがいる。

〇全体として
まず息子の逮捕までの時間が短く、
事の起こりまでがスムーズでとても入りやすかった。しかし、そこからが長い。
その長さが父親という立場・境遇故の制約からくる、モヤモヤ感の演出によるものだから仕方がないことなのかもしれないが、かなり間延びしがちであることは否めない(モヤモヤ感というのは悩むというところから行動を起こすまでの時間)。これが緊張感やスリリングさになかなか直結してこないからまたダラダラと感じてしまう。一人ならまだいいのだが、話の展開上二人の父親が出てきてしまうからその感情をより強く感じてしまう。
割と序盤でサスペンス要素のキーであった息子が逮捕された原因が解明されてしまい、サスペンス要素が皆無になる。そこから主人公の行動と息子を助け出すということのつながりが、主人公による事件の及び麻薬カルテルの解明ではなく、主人公と検事との取引だけになるのであまりパっとしない。というのも主人公の行動が直接息子の救命に直結してこないからが故。息子が人質に取られてそれを父親が助け出すという構図であれば、そのために麻薬カルテルをつぶすという流れでシンプルかつ爽快感にあふれるのだろうが、これは事件の解明と息子の救出が直接的でなく検事との取引という間接的なつながりであるから、一筋縄でいかないというか終盤一気にくるものがない。
実話を基にしているという点で、その辺がこの作品には枷になっている気がする。しかし、これは別にサスペンス・アクションを売りにはしているものの、おそらく楽しむところはそこではなく、日本でいえば「それでも僕はやってない」のような社会のシステム・法律などの矛盾や抜け穴といったものに振り回される人間たちについて一時考えさせる、というようなところにある。のだと考える。それを踏まえれば父親としての悩みや覚悟・行動といった演出や演技は見事で、ダラダラと感じたと述べたところはまた違った風に感じることだろう。

〇サスペンス・アクションというウリ(まとめ的なもの)
まず映画の前印象としてハゲ・息子救出・陰謀論があるため、どうしてもブルース・ウィリスというノリを期待してしまう。ある目的のためならば人様のものを平気で破壊していくという覚悟というか潔さ。ドウェイン・ジョンソンという俳優をこの映画の全面的に売りだしてくるからこの前印象と実際に観たときのギャップが大きくなる。無理にいろんなものを詰め込もうとしている感じがしてしまう。
この作品は父親という立場・境遇故の自己保身と他者保身を見事に共存させ、軽快に且つスタイリッシュもいれこもうとしているものの、それが淡白になりがちで、映画の流れとしてはとても単調に感じてしまう。せめてもの救いは実話を基にしているということ。これが無かったらサスペンスとしてもアクションとしても非常に中途半端で駄作としか言いようがなくなってしまっていた。
ドウェイン・ジョンソンという人は私の勝手な印象なのだが、ブルース・ウィリス的なノリとシュワちゃん的なアクションが共存できるような人だと思っている。おそらくまだキャラが定まっていないというか定まらせるような作品を作ることができていないのと、この手の作品には向いていないと感じた。しかし、この作品だけでいえば父親としての演技は見事で彼だったからといっても過言ではなかった。これからに期待する。


Posted by foxtrot on 2013/11/30 with ぴあ映画生活

危険なプロット

危険なプロット危険なプロット (2012)

【監督】フランソワ・オゾン
【出演】ファブリス・ルキーニ / エルンスト・ウンハウワー / クリスティン・スコット・トーマス / エマニュエル・セニエ / ドゥニ・メノーシュ / バスティアン・ウゲット / ジャン=フランソワ・バルメール / ヨランド・モロー / カトリーヌ・ダヴェニェール


★★★☆ [70点]「歩める人生は一通り」

他人の生活を盗み見る・覗き見るという快楽に陥るのはそういうところから来るのだろう。自分では決して歩めない・歩めなかった人生。それを他者あるいはものを介して自分に投影する。しかし、それが自分の人生に反映されるとは限らない。
この世界にはあらゆる人生があり、そのどれかが変化したところで影響を受けないものがあれば、劇的な変化を生むものもある。つまり人生はそれぞれに相互関係が直接的であり間接的でもある。関係すらしていないかもしれない。

ある事象に対し多角的に楽しむという演出の方法としてグランドホテル方式なるものがあるが、この作品は何かを基軸に描かれるグランドホテル方式とは少し異なり、クロードが書く作文を媒介に現実世界と他者の世界(空想?世界)が共存する。この作文という媒介だからこそ描ける世界観と、その世界観を広げてくれる言葉選びというか遊びというか。そしてその才能に翻弄される人たち。これがおもしろい。

芸術に対して
・才能があるが、まだ荒削りで原石のクロード。
・自分で創り出す才能は無いが批評はできるジェルマン。
・王道を知っているからこそその王道からの脱却に苦しむ、ジェルマンの妻。
この三人の関係性が絶妙で、三者を簡単に言ってしまえばそれぞれ上から邪道、仲介役、王道となる。
まず前提として芸術は理解されてこそ芸術足りえるというところがあり、そこが面倒くさいところなのだが、それがあってのこの映画。そして人物たちの関係性。

全体的にフランス語の発音により醸し出される雰囲気がなんというか素敵。
他者の生活を覗き見るという映像の演出もまたおもしろく、フェードインとフェードアウトが演劇を観ているようでそそられる。

アドバイス的な何か。
映画の紹介としてサスペンスチックな印象を受けるかもしれないが、それを念頭に置いておくと消化不良感が否めなくなる。
作文の世界と現実世界の境界線を見え難くしているというか、わざと曖昧にしている感があるのでそこまで深読み・深入りするのは危険なのでご注意を。


Posted by foxtrot on 2013/10/05 with ぴあ映画生活

悪女 AKUJO(2017)

~アクションは爽快~ 〇はじめに  韓国ではこの方はイケメンの部類なの? 〇想起する作品  「ニキータ」  「アンダーワールド」(2003)  「KITE」(2014)  「ハードコア」(2016)  「レッド・スパロー」(2018)...