~カメラ~
〇はじめに
見どころは、さすが阿部寛と言ったところか。
〇想起する作品
「クリフハンガー」(1993)
「バーティカル・リミット」(2000)
「デイ・アフター・トゥモロー」(2004)
「エベレスト」(2015)
「MOONLIGHT MILE」
「孤高の人」
〇こんな話
頂上に立つ。
〇カメラ
羽生という男。
彼という人物像を前半部分で、他者の証言によりひたすらに形成する意図はわかる。後に直接出会うこととなる、実際の彼との比較させるためだ。この前半部分の見せ方はうまかった。しかし比較させるべき後半部分が何とも浅かったように思う。
元パートナー、クライマーとして陰と陽の関係だった者、そして事故死した男の妹。その他もろもろ(いたかな?)が羽生という人物を語る。冷酷な人間か、自分本位な人間か、どのように羽生という人間が映ったことだろうか。
ロープを切ったか否かというところが1つポイントとなるわけだが・・・
山岳会だかの連中がパートナーが宙づりになったらどうするのかという話し合いをしている中、羽生は独り「切る」と断言する。これをどう判断するかなんだ。ここに彼の冷酷さを垣間見るのか、それとも・・・
問題は、「切らない」ではなく、「切れない」ということなんだ。切る切らないを議論している連中がいる中で、敢えて彼は「切る」と断言するのである。これこそ彼が常に何かを覚悟している証ととれるではないか。ひたすらに自分に言い聞かせていることがあるのではないかと。
その状況になった時にどうするのかという選択肢を考えるのではない。その状況に陥った時にどのような行動をとるのかと覚悟を決めておくのである。しかしこれこそが彼の迷いでもあるのだ。この描き方はうまかったと思う。
羽生という人物像をひたすらに観せ、揺らぎも示したのに、後々の登山における直接の彼らのやり取りの多さに少し疑問を抱く。このあたりは多少我々に判断させても良かった気がする。主に台詞での。深町の心の中での声もだ。彼らの一歩一歩の歩みを映し出す割にはその解釈が台詞に、彼らによってもたらされるものに頼ってしまっている。
深町に関しても少し気になったことがある。山岳チームの2人が滑落したにも関わらずシャッターを切り続けるほどの人物。彼が編集社に羽生の生存を知らせるわけだが、彼はなぜ納得させる、信用させるべき鍵となる、羽生の生存の証拠となる、彼の武器である写真を撮らなかったのかと。ここで抜け目なさを示せば、彼の実力提示は一発じゃないか。シャッターチャンスは常に逃さないと。序盤で深町という人間に疑問が湧いてしまったんだ。後の羽生を心配しカメラをぶん投げるシーンが活きない。マロリーとアーヴィンが登頂したのか否かという証拠とも絡めてここはしっかり描いた方が良かったと思うが・・・。
マロリーとアーヴィンがエヴェレストに登頂したのか否か。これの鍵となるのがカメラになるわけだが・・・ カメラとは何だったのか・・・
何かを成し遂げるということ。それは誰が証明するのか。自分という存在がまず第一。これだけで本来十分な訳だが・・・ それを確かなものとするのが他者の存在である。それを成し遂げたという証拠を承認する存在。これにより個人は自らの功績が周知されることを欲するのである。それが自らの大きさに繋がるからである。正確には自らが成し遂げたという実感が他者によってしかもたらされなくなっている、とするか。この辺りが「なぜ山に登るのか」ってなところとの兼ね合いでもあるわけで。
1つにカメラという存在があった。公にされている初登頂は別の人物。しかしカメラに残されたフィルムによってはそれが覆されることとなる。
そして羽生という存在と相対する人物において示されたスポンサーという存在。活動を評価し援助する。
そして羽生の彼女(尾野真千子)。彼を愛しうんたらかんたら。家族という形態も見せたし、兄妹という関係も・・・
前半の証言ベースもそれだ。羽生という男の評価。
最初のキーとなるマロリーのカメラからはじまり、おそらくここら辺がなんやかんや全体に掛かっているわけだが、この作品は特によくわからない。
最終的なところで結局羽生は登頂したのか否か。
これがまた我々がこの作品に何を見るのかという評価なわけだが・・・。
よ~わからん。総じて力不足。
羽生と深町の関係をマロリーとアーヴィンとの関係に照らし合わせているのだろうよ。2人とも遭難したのに対し、深町は羽生と同じ道を辿り、羽生が辿れなかった道を辿るってな感じ・・・ それがカメラという存在とも関連してましてね・・・
先ほど少し書いた、迷いや決意を台詞として描いてしまっているというのが、判断基準をぐちゃぐちゃにしている要因でもあるのかもしれない。それぞれの役者がうまいが故にそれに拍車がかかっている。・・・とまとめておこう。
〇最後に
尾野真千子が出演してなかったら観なかった。
ではでは・・・
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