2015年4月15日水曜日

ミッシング・デイ(2014)

字幕翻訳:田中英子

~抜け穴~ 

〇はじめに 
 原題は「RECLAIM」 
リクレイムという養子縁組を悪用した詐欺が横行しているそうな。 

〇こんな話
 養子縁組により震災孤児を引き取ったある家族が・・・

〇抜け穴
 時折犯人たちの計画やその実行具合が何とも杜撰に感じるのである。夫婦を監禁する場所や仕方が特にそうなのだが。それを犯人の一人(主犯格)により、優しさであるかのような台詞が吐かれるわけだが、本当にそうだったのかと。妻が監禁場所から逃げ出す場面を振り返ることで、その考え方が少し変わることになる。彼女が逃げ出した抜け穴の存在だ。コードのようなものが繋がっていた。それは一見必要不可欠なもの。当たり前のもの。しかし実はそこに付け込む隙がある。
 つまりこれは養子縁組という制度における抜け穴の存在を暗示していたのではなかろうかと。そこに付け込み仲介業者と名乗る者たちが悪事を働いている。養子縁組が成立するには順番待ちや、受け入れる家庭の身辺調査など時間がかかるのだろう。その子供、里親との両者の幸せのために必要とされる時間が抜け穴だったりするのである。養子を受け入れる者たちは何かしら問題を抱えており、子供を欲する理由がある。そんな者たちが待たされているという状況。逸る、焦る心に付け込み、餌を撒くのである。その者たちが解決できる程度の条件を突き付けてだ。金を騙し取る。
 人が関わる上で隙は必ず生まれる。穴が空く。故にそこに付け込む者たちにもまた抜け穴があり、出し抜かれるというのがまた皮肉で。そしてそもそも子供の心はどこにあるのかと。大人の都合に振り回されるだけなのかと。それを次の項で少し取り上げたい。

〇犯人と夫婦
 夫婦は自動車事故による示談金で経済的に潤っていた。お腹の子供を失い、子供を創れぬ体になるという代償を伴ってだ。目の前の信号が青くなったのを観せ、トラック側の過失であることを強調していた。
―――後犯人の一人が同じ事態に巻き込まれることになる。今度は目の前にSTOPという標識を観せてだ。トラック側に過失は無い。―――
 当たり屋というものがありまして、この辺を意識してのことではなかろうかと。この夫婦は不幸に見舞われた者たちなのだと。

 そしてこれは犯人たちと夫婦の関連性の1つなのである。子どもを、子どもの命をダシにお金を、大金を手に入れた、入れている両者という。片や事故、片や詐欺という手段の違いはあれど。砂浜で遊ぶニーナを眺める男女(夫婦)の視線も、被害者と加害者で関連付けていた。
 これらが最後被害者である夫婦に銃を向けるニーナにつながるのである。ニーナにとってどちらも同じ大人という括りであった。どちらでも重宝されていたのだ。嫌がる素振りをまるで見せていなかった。しかし同じ括りでも、差異が描かれているのである。夫婦とのファーストコンタクトにおいて、ニーナはおもちゃをもらうのである。目の飛び出る。それを犯人のアジトから逃げ出そうとする際に、わざわざ持ち出そうとするのだ。他の、荷造りしていたバッグは置いてだ。お金のために彼女を大事にしていた犯人グループと、彼女の幸せを願いお金を用意する、使った夫婦の違い。そこの根本的な違いを彼女は感じ取っていたのだろうか。表には出さずとも。
 断崖絶壁の場面で、ニーナを優先的に助けようとするのもそうだ。ここが決定的だったか。

〇悪質
 冒頭にハイチ地震による被害を映し出す。瓦礫、死体の山。親を亡くした子供たち。多くが震災孤児となってしまった。
 この情景を事前に観せることで、大人たちがそれを悪用する様が何とも悪質に感じる。劇中妻の方が言うのだが、養子縁組において子供を選んだのではない、何か助けになればいいと思ったと。彼女自身も養子であり、心を痛めていた。
 犯人の言い分が真実だったとして、妻と主犯格の男には養子という共通点があった。同じような経験をしてきた二人が、自らに不幸が起ころうとも子を守ろうとする働きかけにでるのか、同じ境遇の者たちを利用し自らの金儲けに奔るのかという将来的な対比も為されていたのだろうか。

〇最後に
 おもしろかったとい言えば、このような詐欺に引っかかっている方々に失礼になるかもしれないが、こんな悪質な犯罪が為されているという事実を知ることができたのはとても勉強になった。そして何より、よく思いつくなと。この計画が成り立っているのは、元か現職の関係者が関与しているからではないのかと。いや、制度自体が詳しく知れ渡っていないから、どうにでもなるのだろうか。そのよく働く頭をもっと別のことに使えないものかと、毎度思ってしまう。いや、個人の利益を優先するのは当たり前か。悲しきかな。

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