~落とし物~
〇はじめに
申し訳ないが木村佳乃に対しては腹黒さが先行する。彼女が悪いとしか思えない。しかしそれをもってしても最後の息子を想う気持ちは伝わってきた。
〇雰囲気
職場の先輩の距離感が本当に絶妙。ここについつい感動してしまった。
とある騒動の後に、リンゴのスープをさ、温めて持ってきてくれるんだけど。これをさ、くどい作品は隣に座って語りだすわけさ。でもこの作品は少し離れたところにすっと置いてさ、一言二言行って去っていくわけさ。
この場面以前にも、ちょこちょこ彼の様子を伺っては助言めいたことを言っていたりする。ほんとにくどくなくさりげなく。堪らないんだ。この雰囲気が。
それに加え脇役も絶妙。佐々木希の醸し出すナチュラルな雰囲気は本当に好き。これに対して個人的にではあるが、菅田将暉が何とも噛み合っていなかったが、若者ならではの針が振り切れてしまう経験の浅さとして見れば、先ほどのベテラン勢(先輩)の落ちついた雰囲気が活きてくるので、これを狙ってやったのであれば評価したい。
さらには市原隼人。彼と主人公との仲直りをしっかりと描いてほしかったが、最初に彼が電話しているシーンを観せていたからな~。最後の主人公の電話の先は彼だったのだろう。敢えて彼の顔は描かなかったと・・・。市原隼人もうまかった。ちょっと寂し気な顔が堪らんのよね。彼だからこそだろうな~。処分する物の中からCDを拾ってかけたりしてるのなんてね・・・ 彼もまた温人と同じ気持ちを持っていたりするのよね、落とし物に対して。
〇落とし物
持ち主(落とし主)、拾った者、預かった者、処分する者。見て見ぬふりをした者や気付きすらしない人もいるだろう。果たしてそれはどんな物なのだろうか。よくTVで預かり所の特集があったりする。その落とし物にはどんな想いが、ドラマがあるのだろうかと。
その持ち主の顔を想像して似顔絵を描いていく温人。タップシューズの件大好きね。片方だけでは奏でられなかったタップが、持ち主の元へ帰ることで本来の姿に戻る。力を発揮する。
それに対してどこか思い入れがありそうで温人たちに悪態をついた人間が、次に会った時には代替品を手にしている。徹夜してごみ処理場から探し出した傘が道端に捨てられているのだ。あれだけ傘の山を築いて、たった一つ持ち主にとっての特別なものを見つけ出したんだ。それがなんともあっさり。
これが兄貴の言う、残された者の気持なんか考えたことないんだろというところに繋がるわけか。いつも自分のことばかりと。
なんなんだろうな・・・ 簡単に片づけるならば都合が良いってなことで落ち着くんだが、ニュアンスが多少異なるんだよな・・・
落とし物=残された者(父と兄 弟?) 落とし主=母親
ってなカタチにしてみるとなんか見えてくるか。落とし主に関しては最初の中学生?、タップシューズのおじさん、主婦?、佐々木希が描かれた。それぞれ、
自分の持ち物だが自分のものだと言えなかった。
持ち主の元に戻り本来の姿を見せた。
代替品があるねん。
人をつなぎとめるもの・・・?
として見えるわけで。
兄貴が父親ができなかったことを観覧車で再現をする。これを眺める者たちがまた印象的だ。休園から閉園となったワンダーランドの観覧車に彼らはいったい何を観ていたのか。とある業者の男は迷惑な話だと。刑事は綺麗だったけどな~と。
拾う者届ける者、預かる者、処分する者がいるんですわな。綺麗事だけじゃ済まないケースもあるわけで。
ここがまた複雑なわけよ・・・
〇観覧車
これにも意味があったんかな。
観覧車とはどんなものなのか。ひたすらにぐるぐる回るんだ。乗り合わせた人とともに。乗り合わせる形態はどんなものだろうか。そして一周しなければ降りられない。降りずにもう一周したっていい。降りてまた乗ってもいい。乗る相手はそのときにいるかどうなのか・・・ 乗るチャンスが来るのか来ないのか・・・
〇最後に
エンディングも木村佳乃の歌声がマッチ。トーンが堪らんのよね。最初の項目でも書いたが、この作品は終始雰囲気がすばらしかった。
ではでは・・・
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