2015年3月12日木曜日

エビデンス -全滅-(2013)

エビデンス-全滅-[DVD]


~確たる証拠~ 

〇想起する作品 
 「デッド・サイレンス」(2007) 
 オチまで緊張感を保つために、ちょくちょくビックリさせる演出を入れるところ。POVならではで怖いんですよ、もう(笑) 

〇こんな話 
 映像の中に全ての答えがある。証拠は手に入れた。犯人逮捕は目前だ。まぁ見とけって。
・・・ってな具合で捜査していく刑事を鑑賞するお話。

〇騙される心理 
 はじめに映像証拠がどれだけの信頼を持つものなのかという提示が為される。そして劇中でも刑事たちが映像に全てがあるとまで言っている。それを踏まえてこの作品を鑑賞することになる。

 刑事たちは最初に説明が入るように、映像証拠を重要視しすぎてしまった。映像の登場人物たちを疑えはすれど、映像証拠自体を疑うことをしなかった。映像を分析することで犯人が捕まえられると確信してしまっていた。いや、映像を手に入れたことですでに犯人を捕まえた気にすらなっていたかもしれない。

 この刑事たちの思考は、参考書を買っただけで勉強した気に、できる気になっている学生と同じだ。確かに参考書の中には必要不可欠な情報がふんだんに盛り込まれている。しかしそれは手にしただけでは決して自分のものにはなっていない。にも関わらず勝手に自信に満ち溢れてしまうのである。買った、手に入れたとともに味わうあの「やった感」「満足感」。おそらくその者たちは、過去に参考書を手に入れることでそれをやり込み、ある程度の知識を身に付け、ある程度の結果を出してしまった者たちであろう。その経験により、いつでもできる、やればできるという、どこからともなく来る自信に苛まれ、ひたすらに自身を盲目にしてしまう。
・・・いや、その参考書を使っている者が、オススメしている者が勉強ができ、何を勉強すべきかもわかっていないのにそんな者たちに憧れ、カタチから入ろうとした者かもしれない。カタチ、表面的なものだけで満足し、中身は伴わない。こちらの方が多いか。

 違うところは映像証拠(参考書)をしっかりと読み解いていこうとしたところだ。我々の道が絶対に正しいと思い込み、ひたすらに取り組んだ。こんな結果になってしまったのは、映像証拠だけに重点を置きすぎたからである 
・・・いや、実は彼らの捜査とされるところも、参考書を解くのではなく、参考書を買うに至るまでの選別に過ぎなかったのである。参考書を手に入れるまでに、周りの人間がどんな参考書を使っているのかを成績などの情報を踏まえて調査する。人それぞれオススメも違うことだろう。そしていざ買おうと足を運んだ本屋でもひたすらに悩むと。ページをめくり試し読みをし、それぞれの良さを比較し絞りこんでいく。そうこうする内に脳内で勝手にできるようになっている自分を想像してしまうのである。辿るべき道を探ることが、いつのまにか通ったことになっている。そして最終的に選別した物を手に入れることが自分を絶対に高めるだろうと錯覚するのである。

 刑事たちが映像証拠を手に入れたことが、学生の参考書を手に入れた際の感情と被り、しかし映像証拠を読み解いていくことは、実は参考書の選別に過ぎなかったと。
 要は参考書コレクターですね。買ったはいいけど、読みもしないまたは少し開いただけで、別のものが気になりだす。能力は上がらないのに、参考書だけが積み上げられていく。目的が能力の向上ではなく、参考書の収集になってしまっていると。その勘違いに気付いた時には、時すでに遅し。

〇最後に 
 こういった映画を観た後で、犯人がわかってたと言っても負け惜しみのように聴こえるかもしれないが、この作品においてはあるシーンで犯人を確定、確信できる。というのも、どんでん返しであろうことを考慮し、事件の状況証拠と、刑事たちが一番に面を喰らう、且つ鑑賞者が一番に満足が行くだろう犯人像はこの人物しかいないからである。最初に刑事たちの証言で犯人の触りは出てきており、それを聴いておいて、容疑者とされる人物たちが彼らの映像主体で行われる捜査でしか出てきておらず、それがいきなり映像外(映像に対しての現実)で映ってくる人物が出てきたら・・・。 
 しかしそれをもってしてもこの作品はおもしろいのである。刑事たちの有能感と無能感を見事に演出するラスト。あと一歩だったのにと、その僅かな差、タイミングが少しずれていれば形勢は逆転していた。しかしその距離がひたすらに遠いのだと。この拮抗した戦いの演出がなんとも心躍るのである。

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