2014年5月26日月曜日

ボディ・ハント(2012)

ボディ・ハント[DVD]

~木の顔~ 

〇こんな話
 キャリー・アンという少女が両親を殺害するという事件があった家の、隣に引っ越してきた母サラ、娘エリッサ。事件のあった家は空家とされていたが、実はライアンという青年が住んでいた。一見性格や体面良く見られる彼ではあるが、周りからは非難の目を向けられており、性格もあってか何か心を許してしまうエリッサ。親交を深めていくことで明らかになっていく事件の真相とは・・・。

〇騙される心理
 周知の事実としては、キャリー・アンは死んだとも森で生きているともされていた。まあ遺体も見つかっておらず、行方不明ということ。それを踏まえて物語は進んでいく。 

 ライアンは子供の頃にブランコから落ちて精神異常をきたしてしまった妹キャリー・アンを匿っていたとされていた。地下室のベッドに縛り付け、閉じ込めていたわけだが、彼の様子から献身的な介護をしているようにとれる。彼自体の記憶が曖昧だったというのもあるのだが、事故(キャリー・アンが精神障害をきたすに至ったブランコ転落事故)の原因は彼にあり、それの償いとされていた。 

 何度かキャリー・アンが地下室から逃げ出すシーンが存在する。ライアンの行動は精神異常が故に他者に害を加えるからと、それを防ごうとするがために、そしてキャリー・アンという存在を隠すために、必死に追いかけ彼女を連れ戻すというシーンにとれるのである。

 ライアンという表向きはとても好青年。そして精神異常をきたす原因となってしまったという償い。そしてそれを知らない者たちが彼に向ける視線と対応。それらからエリッサだけでなく、鑑賞者含め彼に同情を強いられるのと、精神異常というキーワードから、キャリー・アンとされる人物の劇中の行動の正当性が確かなものとされてしまう。この辺からライアンが妹キャリー・アンの世話を人知れず妬いているという見解に達する。騙された・・・かな?

・綻び
 鑑賞者としてはキャリー・アンを連れ戻す際に、ライアンが誤ってキャリー・アンを殺してしまう場面から、新たなキャリー・アンが運ばれてくるところで違和感を覚える。まあ、当事者たちはまだキャリー・アンの存在すら知らないわけではあるが。
 エリッサ視点では、ライアンの家のゴミ箱に捨てられていたタンポンと青いカラーコンタクトから違和感を感じ始める。そしてキャリー・アンとされる人物を目撃してからの、誘拐されてきた少女の財布及び身分証明書の発見で確信に変わる。


〇結末 
 キャリー・アンはブランコから落ちて子供のころに死んでおり、それ以降ライアンがキャリー・アンとして生きていた。そしてそれは本人が望んだものではなく親による虐待であった。両親はライアンではなくキャリー・アンを求め、そのストレスに耐えかねライアンはキャリー・アンとして両親を殺害する。彼には誰もいなくなってしまった。そこで辿りつく一つの答え。キャリー・アンが必要だ。 

〇木の顔 
 木に何が見えるかと聞くライアン。エリッサは顔が見えると。 
少しばかり検証してみようと思う。下の画像が問題の画像。さあ、何が見えるでしょうか?




 まあ、これでしょうと赤マルをつけてみました。どうでしょうか?



 ムンクの「叫び」に描かれているような人物(の顔)が見えませんか? 私にはもうそうとしか見えません。
その際のライアンの発言。「人は秘密に気付かない。見つけてもらうのを待ってるのに」・・・と。  

 このシーンと対比であるのだろうが、顔が見えた木には何が見えるかと聞くと、最後母親が答える。木が見えると。そうするとエリッサが涙を流す。ここがよくわからない。見ようとするからそれが顔に見えるのであって、見えないものには何も見えない。彼女の行動は彼の先程の意味深な発言を含め、彼を理解したいがためのものであったととれる。全体を見るのではなく、ある一部分を見ていた。それにより見えないものがあった。見るべきものを見ようとしていなかった。最後自分の身勝手な行動で惨事を引き起こしてしまう。その大きな過ちでやっと全体(見るべきもの)が見えたと。そんな感じなのだろうか。彼女の劇中の行動は木を見て森を見ず、ってところか。 

〇最後に 
 彼女の性格は弱い者の味方をする、救おうとする、というような性格。まあつまり、ある対象に関して共感・感情移入しやすいということになる。いわゆるお人好し? そんな性格の人は騙されやすい、みたいなことを何かの番組で言っていた・・・ような気がする。この映画はそれの典型か。騙す要素としてあったのが、この映画の場合は演出云々というよりは、彼女エリッサの性格の方が大きかったと、勝手に解釈している。自分は騙されない、そして彼女のようにマイノリティに味方する、そんな自分を(自覚・無自覚問わず)特別視しているような性格の人間はあぶないすよと。みなさん、気をつけましょう・・・。

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