2014年7月11日金曜日

宇宙人王さんとの遭遇(2011)

宇宙人王さんとの遭遇[DVD]


~王! お前だけは許さない~

〇はじめに
 この作品は「宇宙人ポール」を鑑賞してから鑑賞してほしい。これに尽きる。

〇こんな話
 中国語の通訳(翻訳?)をしているある女性が、ある日政府の者に緊急である人物の通訳をしてほしいと頼まれ、施設に連れて行かれる。最初は暗闇の中でどんな人物であるのかまるでわからないまま通訳をしているのだが、通訳のニュアンス上顔を見たいとの要望に明りをつけてみたらあらビックリ。宇宙人でしたと・・・、そこから始まる地球人と宇宙人の友好へ向けての話し合い? そんな話。

〇騙される心理
 最初にも書いたのだが、「宇宙人ポール」を観ておいてほしい。この作品を観ておくことで宇宙人に対するイメージを、ただ単に人類に敵対する勢力ではなく、友好も築けるべき存在でもあると記憶の片隅に置いておいてほしい。そして「宇宙人ポール」により途中からコメディとしても観えてしまう不思議。この感覚を是非味わっていただきたい。

 本題に入る。ポイントはまず主人公が女性であること。そして容姿端麗で緊急でものを頼まれるほどの優秀な人物であること。そして通訳という仕事とその視点も理解しなければならない。 

・女性 
 直接的なものでいえば母性本能か。男性のそれよりも強いものがあるだろう。一方的な攻撃というか非難されている人を見ると守ってあげたくなる・・・? 

・優秀さ 
 常識を兼ね備えていると言った方がいいか。鑑賞者も主人公が常識人・知識人であることに共感し、宇宙人に対する疑いの目を遠ざける。彼女が言っているんだから、そう判断しているんだからと信憑性を高める。 

・通訳という仕事 
 通訳は言ってしまえば機械も同然の仕事を強いられる。語り手の見解に対して自分の考えをよぎらせることなく、その者のニュアンス通りに正確に言葉を変換し伝えなければならない。私情の介入はあってはならない。しかし、通訳である前に人である、女であると。その辺がおそらく大きい。 

・視点(主人公視点) 
 第三者視点でしっかりと全体の流れを把握することで悪とわかる存在でも、当事者になりその悪が善とされる者たちに集団リンチをされているという一部の場面を切り取ってみれば、悪をかばいたくなる気持ちも少しは湧くでしょと。悪という罰を受けるべき存在でもその罰は誰が下すのかと。善とされるお前たちではないよねと。そんな気持ちが湧く人も少なからずいるだろうと。そんな見解を持ってしまう人たちがいるからこそ、この映画はその者たちを全力で馬鹿にする。というか皮肉る。そこが堪らなくおもしろい。 

 この映画での彼女の立場はというと、通訳という地球人と宇宙人の両者の立場を判断できる第三者的存在でありながら、尋問という一部分にしか関わっていない。先ほどのリンチと同じ状況である。地球人と宇宙人の板挟みに会うわけなのだが、この限られた会話の状況から考えると、どちらが加害者(悪)で、どちらが被害者(善)であるかは明白。そこからの彼女の判断。でもそれを判断するのもお前ではないよねと。考え事態が矛盾しているんだよと、全力で皮肉ってくる。むかつくわ~。  



次に宇宙人王さんについて 

・王さん(宇宙人視点) 
 よくよく思い返してみると、「なぜ中国語を話すのか?」と問われた宇宙人は「世界で一番多くの人間が話しているからだ」と答える・・・。この辺から地球ディスってるよねと。 

 そして王さんという呼称で呼ばせている(呼ばせるに至る)時点で、人間と同じ扱いを受けるべく存在と無意識に認識させられてしまっている。見事な心理トリックだ。宇宙人ながらあっぱれあっぱれ、・・・関心している場合ではない。 

 最後まで演技派な宇宙人。地球人と宇宙人が手を取り合う。なんと感動的な演出だ。 執拗なまでの尋問に宇宙人に同情してしまう主人公。鑑賞している側も異種ながらすっとぼけてるようでいて、実はそれは純粋・素直が故の愛くるしいともとれる表情(と思われる)に何か気を許してしまう。そして中国語という発音。そんな宇宙人の術中であることを知らずにいくと、その顔が最後見事に憎たらしく見える。最後の「お前、バカだな」・・・ドカーン!!となるわけです。フッ、笑っちゃうぜ。

〇余談 
 敢えてこの話に突っ込むのであれば、政府の役人が機密情報を漏らさなすぎなところ。政府にしてみれば被害を最小規模に抑えるため、敢えて情報に制限をしたのだろう。本来であれば一般人に情報を公開することなく、何事もなく解決できたはずの事件であったわけで。内密に事を済ましたかったと。でもよくよく考えると、この尋問が宇宙人侵略の最終段階というか、勝つか負けるかの最大の山場である。そんな状況で彼らは、地球人という味方のはずの存在が、敵を助けてしまうという状況にもって行ってしまうという不祥事を起こしてしまうわけで。とんだ無能連中ではありませんかと。外がどういう状況なのかという情報を与えなかったがために、この女は独断で行動してしまい、それ故に起きてしまった事件。限られた情報から導き出される間違った結論。それは勇気ではなく無謀という皮肉。騙される方が悪いという軽蔑。とんだ茶番劇。 

〇最後に 
 「宇宙人ポール」でも書いたのだが、宇宙人は星間航行の末に辿りついた地球に何をしにくるのか。人類も火星移住など現実味を帯びてきそうなこの時代に敢えて問いかける。コロンブスの大陸発見や日本でいえばアイヌ民族などか・・・。開拓、領地争い、戦争。先住民がいた地に、後から土足で入ってきた者たちは何をしたのか。侵略か友好か。 仮に地球人より先進的な種がいるとして、一番に言われる行動は介入しないというのがあるらしいのだが・・・。生存(種の存続)、開拓という目的があれば話は別だろう。友好的に受け入れてくれる先住民であればいいが、そうもいかない。逆も然り。地球が侵略されると聞けば、少なからず抵抗するだろう。結局両者は何かしら優劣をつけたくなるもので・・・。共存とは支配する者とされる者という関係でしか為し得ないのだろうか。

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