2014年12月17日水曜日

ローン・サバイバー(2013)

ローン・サバイバー[DVD]


~二元論~ 

〇はじめに 
 戦場では敵か味方かの二種類で人間を判断する。混沌としている世界を二元論化という単純化をする人間という単細胞。それを戦場の掟(パシュトゥーンの掟)により明らかにする。 

 この作品と同じくマーク・ウォールバーグ主演の「ザ・シューター/極大射程」という作品を先に観ておくことをオススメする。正義と悪という構図というか表現の違いを是非とも感じていただきたい。表現に誤解を招くかもしれないが、この作品をよりおもしろく感じられると思う。あとできれば「英雄の条件」も。こちらは交戦規定に関しての作品。

〇演出 
 シールズの訓練の過酷さの演出から映画は始まる。非人道的とも言える訓練の数々。下手をすれば訓練で命を落としかねない、そんな危険な所業。多くの者が訓練を断念し止めていく中、それを乗り切ったということは、国に対する忠誠心と、仲間に対する尊敬がこの上無いことを意味する。一旦これを念頭に置かせるのが見事である。 

 戦場でのシーンは雰囲気・空気のメリハリがすばらしく油断を許さない。安心しているとすぐに緊張へと引き戻される。その感じがすばらしい。張りつめた気持ちでいなければここでは生き残れない。劇場で何度ビクついたことか。

 なぜ彼は助かったのか? という問い 
仲間の自己犠牲によるものだけで終わるのかと思っていた。それだけだったらただ単に戦争の肯定化及び美化で終わってしまっていた。この映画はそうではなかった。そして何より実話であるところが驚きだ。

〇救援部隊 
 軍隊では仲間と言う存在を重んじる。基本戦争映画ではこの友情を最大限に尊重する。最初に映し出される訓練の様子からも伺えるが、同じ過酷な訓練を乗り切った仲間であれば、であるからこそ互いの尊敬はこの上ないものとなっている。極限状態において、命を預けられる、まかせられる存在としての仲間。だからこそ規則を無視した無謀といえる救出作戦でも実行しようとする。しかし実際の戦場とは無慈悲なもので、そんな感情論など見事に排除する。この作品はその様子を鮮烈に映し出す。

 結果的には無謀であった救出作戦だが、鑑賞者の中にはその行為をかっこいいと思い、ワクワクした者もいるのではないだろうか。かく言う私もその一人。単純なる戦争映画であればこの救援は成功する。敵を一掃し、駆逐し、悪を倒したということで、アメリカ大正義で終わる。しかし、この映画はそうではない。そこが何とも言えない。 

〇戦争=かっこいい 
 皆さんは一度でも思ったことはないだろうか。戦争がかっこいいと。
 よく勘違いされる(その意見を否定しているわけではない)戦争がかっこいいという風潮。前項の救援部隊を基に考えてみたい。 なぜかっこいいと思ってしまうのだろうか。人間の命が簡単に奪われ、非人道的な行為がまかり通る戦場という世界。そこで行われる人と人との争いがなぜ我々にはかっこよく映るのか。おそらくは仲間同士の尊重からくる、仲間を助けるという無謀とも言える自己犠牲。これをかっこいいと思うのだろう。そしてこの演出が一番に活きるのは、命という人間における最大のものが関わってくる戦場(戦争)という場だろう。仲間に対してどれほどの犠牲を支払ったのかというものが、一見でわかる。これを勘違いして戦争が、殺し合いがかっこいいと思ってしまうのではなかろうか。そしてゲームと言う何度でもやり直しの利く世界の浸透がそれを助長しているように思う。

 別に戦争がかっこいいという意見を否定しているわけではない。何を言いたいのかというと、戦争がかっこいいという意見の大体は、
「戦争≒自己犠牲というドラマ≒かっこいい」
というのが
「戦争=かっこいい」
という風に書きかえられていることを理解せずに、短絡的に結びつけられているということだ。これは戦争に対して直に関わっていない第三者的価値観なのである。真ん中のドラマの部分は当事者としてはあまり見えてこない部分だ。まぁ自分が当事者ではないので、そこが考えの限界というのもあるのだが・・・。少し考えてみていただきたい。

〇最後に
 はじめにの項で書いた、戦場という世界。そこにいるのは結局は敵か味方かの二者だ。守るべき者たちと、倒すべき者たち。そんな構図を作り出すのは、家族や仲間といったつながりである。そしてシールズの訓練という演出を観せることで、戦場という世界観で繰り広げられる葛藤が見事に活きてくる。敵か味方かというのを、米兵か原住民かで判断を下してしまう価値観に対して、米兵にも原住民にも事情があって、種類があって、全てを互いに敵と見ているわけではないというのを、交戦規定だったり、パシュトゥーンの掟により明らかにする。というのがこの作品の作りですばらしいところ。是非堪能していただきたい。

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