~対価~
〇はじめに
好きにならずにいられないね、いられねえよ。
〇想起する作品
「偽りなき者」(2012)
「鑑定士と顔のない依頼人」(2013)
「LIFE!」(2013)
「THE BRIDGE/ブリッジ」
〇こんな話
ほんとにざっくり言ってしまえば、コミュ障とメンヘラのお話。
〇打算
良く言えば安定志向。悪く言えば臆病。
世界の窓口である空港に勤めていながら海外に行ったことがなく、趣味はジオラマにラジコンとオタク気質。母親と同居しており、食卓においては手を伸ばせば届く位置に牛乳やシリアルが置いてある。行きつけのレストランではおいしいからといつも同じものを頼む。こんなところから自ら作り出した殻(空間・スペース)に閉じこもりがちであることを伺わせる。そんな彼が最後飛行機でエジプトに飛び立っていく。エジプトロケができなくこのラストだったそうだが堪らないよ。堪んねえんだよこれが。
日常に何かしら不平不満はあれど、時に充実しておりわざわざ現状を変化させたくない気持ちが痛いほどにわかる。今のままで別に構わない。チャレンジしないのではない、逃げているわけではない、必要性を感じないだけなのだと。
ダンスクラブへと入っていこうとするシーン。中では和気藹々と人が屯している。その中に独り入っていけるかどうなのか。どこか自分の知っている空間に入り込みたくなる、いたくなること必至。そしてDJへのリクエスト(電話・通話)である。いつも通りの、知れた人間と話がしたくなる。
職場では若者からいじめられるが一切やり返すことはしない。言わば良くも悪くも揉め事が嫌いなのである。彼が何もしなければその場でそれ以上に発展することはない。
片やゴミ処理場。新入りのフーシを温かくとは言い難いが当然のように受け入れる。それにどこか戸惑うフーシが印象的。行きつけのレストランは繁盛しているとは言い難いが彼を気さくに受け入れる。彼女を連れて行ったときのいつもは無いサービスが粋。DJはお前を待ってたと言わんばかりにいつもとは違うリクエストでも快く受け入れる。
こんな関係性が何とも素敵に、とても愛おしく描かれている。
彼は器用であるが故に、器用過ぎるが故に不器用なのである。繊細なのである。この表現がホントに秀逸。
彼の能力は並外れたものではない。クッキング(クレームブリュレ?)にバーナーを使えば、いじめっこのエンジン修理だってお手の物。日曜大工に料理までも。
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母親に作ってる料理めちゃくちゃうまそうだったな。グンナル・ヨンソンはどうやらコックの経験があるみたいで。手慣れてる感じだったもんな。
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そんな能力を評価されてはいるが、彼の内面からの、優しさという部分が行動に移されると世間の見方は変わってくる。どうも料簡の狭い世界になったものだと嘆きつつも実際問題前例があるだけに見逃すわけにもいかないのだろう。めんどくせ~・・・
父親より小さい娘の方がフーシという人間を見抜いているというね・・・
初めにラジコンを吟味するフーシが描かれていた。彼は独りで、時に友人と没頭できる趣味にお金を費やしているわけであるが、これはその楽しみに見合うと判断したがためにお金を払っているわけである。楽しむという対価にお金というものを払っている。
これを踏まえての出張ストリッパー?デリヘル?。お金を支払いそういった行為をしてもらう。お金をもらいそういった行為をする。これも対価なわけだ。
そんな関係を観せられてのフーシのシェヴンへの行動である。
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まぁ何ともシェヴンが我儘に感じてしまうわけだが、こういった見方がまた劇中フーシを軽蔑する人間たちと同じ見方なわけで・・・。
空港職員は給料が良いのか、貯金があったのかは気になるところだが、あんたはどこまで尽くしてやるねん・・・。
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彼が彼女のために行ったことはそれ相応の見返りがあるとは全くわからないものなわけである。まぁこちらとしては薄々無えんだろうなと思いつつも、いや彼にとっての変化なのだと受け止める。
フーシという人間をひたすらに観せられ、フーシという人間を好きにならずにいられないとまで受け止めているからこそ、見返りを求めての行動ではないのだと、我々はフーシのシェヴンへの純粋で真っ直ぐな気持ちを快く受け入れられるのである。
〇最後に
この作品でグンナル・ヨンソンの大ファンになったね。彼のために監督が書き上げた作品だったようだ。愛が滲み出てたね。ダーグル・カウリ監督の別作品も是非観てみたい。
ではでは・・・
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