2016年12月1日木曜日

F エフ(2010)

F エフ


~理由~


〇はじめ
 F=落第


 Fって何なのだろうか?

 言葉(文章)というところに重きを置くイチ教師が主人公となるので、Fという単語から始まる言葉を抜き出していくといいのかもしれない。例えばfaultなんてのもあるのか。



〇想起する作品
 「KRISTY クリスティ」(2014)


〇こんな
 各地で生徒が教師に暴行を働く事件が多発。次はどこだ・・・



〇理由
 学校の変化(あり方)を問題として取り上げている。教師という存在の位置づけ。生徒側が力を持ってきたわけだが、それに伴い学校側もなるべく問題を起こさないようにと教師絶対主義ではなく生徒側に媚び諂うようになってきた。いや単に生徒側教師側両方に考える力が欠如してきたと言った方が良いか。原因や理由というところを追及することをしなくなった。それを考え始めると責任というものが発生するからである。ざっくりとは誰が悪いのか?

 ならばと、なるべく穏便に穏便に済ませようと末端を切り捨てていこうと努力し始めるわけである。

・・・以上は偏見である。


 そんな関係性を意識させた上で、教師が生徒を、生徒が教師を憎む恨む理由となる部分を観せられた上で、生徒と教師が何の見境も無く襲われる事件に向き合わされることになる。

 では今回の事件は何の理由があり行われているものなのか?





 最初に観せられた教師と生徒の衝突。生徒は怒りの対象を教師へと定め暴力という行為で感情を解消しようとしている。

 ではなぜ怒ったのか? 皆の前で馬鹿にされたからである。 

 ではなぜ馬鹿にされたのか? 落第を言い渡せるほどの成績だったからである。 

 ではなぜ落第できてしまうのか? 生徒のおつむがお勉強についていけていないからである。


 ではそれが今回の教師と生徒との衝突の明確な動機(理由)に成り得るのか?


 普段から何かしらあったのかもしれない。娘への依怙贔屓を想わせるところがあった。しかし今回の衝突に至るまでの経緯はこの場面以外何もわからないのである。

 そしてその経緯を辿ったところで原因は絞れても明確に何がいけなかったのかを決定づけることは難しい。生徒の行動は日々積み重ねられたストレスやフラストレーションが爆発したに過ぎない。そこでやっと露呈するのは、今回問題となったきっかけ(起爆剤)に過ぎないからである。

 何が起爆剤となるかは各個人のキャパの問題で、故に日々のフラストレーションと起爆剤とは明確な境が無いことになる。今回の件ではない別のどこかで爆発してもおかしくなかった。つまり今回明らかになった事実において解決策を施したところで何の解決にもならないわけである。ただ来るべくナニカ、起こるべくナニカを引き延ばしたに過ぎない。

 この結果陥るのは予防線を張る事と、さらには消極的になることである。原因を解消するために、そもそも原因となるものを作らない。というよりも原因から目を逸らすことである。生徒に背を向け授業を行う教師の姿があった。

 生徒の顔を見ない教師。教師から目を背ける生徒。教師の顔を立てない教師。




 それを踏まえ見つめるフードを被ったモノたちに象徴されるモノ。それは「見えない」ことである。なぜ襲うのか、襲われるのかというところ。

 ここで「見えない」としているが、本来これは「見ようとしてこなかった」ということが本意であろう。なるべくなるべく穏便にと向き合ってこなかった、ただ引き延ばしただけの事態。これにより葬られてしまったことがある。そんな積みに積み重ねられた問題が今回事件となって表出した。

 誰かしらの犠牲で学校という中で完結できるもの、揉み消すことのできるものがある。そういった対処をこれまでもとってきたのだろうことは容易に伺える。しかしそのいったいどれが明確な理由(根拠)と成り得るのかは見えない。

 反対に被害者(殺された者)の顔ははっきりと映し出されていた。被害者の顔から見つめる加害者の顔。こことグロテスクな表現を結び付けたのはうまい。ここから判断できることがあるのかどうなのか。なぜここまでするのかという彼らの感情というモノが表現されているのかどうなのか。

 「見えない」という表現を逆に「見える」というところで際立たせていたのは秀逸だった。立ち向かうべき恐怖が見えないが、実際に晒されている恐怖がある。





 父が娘を守る。そこに理由が必要か。妻を見捨ててまで。娘に恨まれることとなったとしても。




 最初に選択を迫られた。学校側の提案を半ば強制され彼は退くこととなった。妻と娘の両方を失うこととなった。



 これが最後の決断に繋がる。両方失う可能性を鑑みれば、今助けられる娘だけでも助けるのが最善(苦渋)の選択と言えよう。これが娘への愛とも言える。


 不条理な世の中での一寸の希望。そこに目を向けたというお話でオチがつくのだろう。



いや待て・・・

 元妻からは目を背けたことになる。バックミラーを一切見ずに?行く先を見据える主人公。娘の「母親を助けてくれ」という言葉を聞かずに自らの主張を押し通したことになる。これは最初に主人公がやられたことと何ら変わらないことではないのか。何かを立てる、守るために何かを犠牲にしなければならない。

 妻は校舎内にて「誰かいるのか?」と声をかけるわけだが、その声はいったい誰の耳に届くのか?

 現代社会において、いやいつの世もそうなのか、皆が直面している社会の闇の深さが垣間見られる。




〇最後に
 Fというところがイマイチわからない。1つに落第という理由を見出させたわけだが、それも結局はきっかけとしての1つでしかない。数ある中の理由の1つでしかない。1つの理由から全体への展望を狙ったのだろうか。例えばはじめにも書いたが、Fから始まる単語はどれだけ出てきたのか。それをピックアップできたところで真意はつかめない。それもまた理由を見出す上での一部分に過ぎないからである。


 ではでは・・・

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