2014年6月15日日曜日

イエスマン "YES"は人生のパスワード(2008)

イエスマン[DVD]


~宗教? カルト?~

 〇はじめに
 上司がノーマンという名前は笑うところなのか? 

〇こんな話
 ひたすらにNOという返事か、いつも押し切られて巻き込まれてきた男。要は付き合いの悪い男。そして運のない男。ある日過去の友人からイエスマンという宗教だかのセミナーに誘われる。常にYESと答えよと。そこから人生が大きく変わり始める。はてさて・・・。

・ざっくりと
 実はカルト、その危険性とは?

 〇性格
 引きこもりがちで仕事以外にやることといえば、映画鑑賞。しかもレンタルショップで借りて家で。しかし、友人には恵まれており、面倒見のいい人ばかり。ひたすらに連絡を取ってくれる。

 彼は離婚をしてからおかしくなったらしい・・・。愛していた女性の喪失がもたらす虚無感。おそらく次に起こるであろうそれを恐れて、他人とはあまり深くかかわらないようにしていたのだろう。

〇宗教 
 このイエスマンという宗教とされるものは、下手すりゃというかすでになんだが、カルトにならざるをえない。全てにYESと答えることは人生における姿勢を示しているものではあるが、それを誤った解釈をするものもいるだろう。極論ではあるが、死んでくれ、殺してくれという問いをかけられたらYESと答えるのか。そして皆で死のうという教祖の問いには。そんな話では決してないのだが・・・。 

 主人公がテロリストと間違われる。全ての問いにYESと答えていただけで、いろんなスペックを持つに至り、彼のそんな素性を知り彼女に誤解されるところから関係がこじれ始める。全部が本心ではないととられてしまうのだ。しかし最後教祖の解説により、YESMANという解釈を誤っていたとわかる。心からYESと言えるようになるためのものだった。責任とかそんなところだろう。安請け合いするなと。自分の力や存在を自覚しろと。人との関係の中に自分の価値を見いだせと。全てにYESと答えるのは導入なのだ。今までであれば断っていた本来関わるはずの無かった世界。そんな世界に身を投じてみて開ける新たなる境地、見地。そこから導き出される価値観。それを経て心からYESと言えるようになる。それこそがYESMANのねらいだった。そんなねらいとは裏腹に、彼の場合はYESMANの真意に迫るのではなく、ただ能力だけが向上されていった形になる。 

〇効果 
 全ての問い、決断を迫られた時に対して、YESと答えることで人生が大きく変わる。そして幸せな人生を歩めると。これの効果があるとして、それはおそらく思いこみにある。俗に言うプラシーボ効果。人間の想像しうる事象現象は実現しうるというようなことも誰かが言っていた・・・。

 劇中ではYESという言葉が幸せへの起点になるという風に語られている。YESという言葉は、最初から無理だと決めつけるのではなく、自分ならばできるといったような前向きな姿勢に向けるがための助けの言葉であると受け取り、究極YESと言えば幸せに繋がるという解釈に陥る。

 負のスパイラルと逆の正のスパイラルに陥らせることが究極的に狙うところ・・・ではない。それだけではカルトになってしまう。まあ、スパイラルに関して少し掘り下げると、人間の描くイメージには正と負の二つがある。「GAMER」という映画のところにも書いたのだが、人間は負のイメージの方に囚われやすい。そしてそれは一度イメージしてしまうと払拭しにくい。何かしらの起点と失敗とを結びつけ負のイメージとする。その思い込みによる結び付きで失敗を繰り返すこととなるか、失敗するという負のイメージにより次の行動を起こせなくなる、というのが負のスパイラル。俗に言うジンクスというヤツ。 一時期流行ったマーフィーの法則というのもそれの類。

 負のスパイラルの逆をやれば良いじゃんということで、正のスパイラルについて考えてみよう。YESと答えることで、その間に何か不幸なことが起ころうともそこで完結させず、何か良いことがあればYESと答えたことと結びつける。YESと答えることで良いことを呼び寄せることができると感じ、次もYESと答える。これが正のスパイラル。因果の結びつきの楽観視とでも言おうか。YESと良かったことを無理矢理結び付けてしまうのだ。YESを起点にして、単純比較してみる。


・正のスパイラル 
[YES→悪いこと→何やかんや→悪いこと→良いこと・・・] → [YES―良いこと]  

・負のスパイラル 
[YES→良いこと→何やかんや→良いこと→悪いこと・・・] → [YES―悪いこと]  


 こんな風にアンダーラインで示した印象の深い・強いもの同士を、人間は勝手に抽出し結び付けてしまう。それを負の方向ではなく、正の方向に利用すると・・・。

 負のイメージによる失敗を恐れるようになってしまった環境をどう変えるのか。それがYESという言葉を唱えるだけで良いというのだからノらない手はない。しかしこのYESという言葉はただ言うだけならばいいのだが、実際問題、様々な反響・干渉を生む。そしてそれは段々と大きくなる。そこが面倒くさい。この映画ではそれをテロリストに間違われるほどのスペックを持ってしまうに至る、という風に表現していた。


〇最後に 
 YESの真意。全ての問いにYESというのは慣らしというかはじまりに過ぎない。真意はYESという返答によって生じる、今後の影響や経緯により積まれる経験から何かを悟り、心からYESと言えるようになること。

 最後の終わらせ方も一筋縄ではいかない。YESMANという誤った解釈を前面に披露してこの映画は終わる。主人公の最後の行動は、誰かしらを救うための一見善意からくるものに見える。しかし、YESMANという団体をいつでも都合の良いように利用できるというニュアンスの台詞を吐いて終わる。ここがYESMANという考え方を肯定しようとする上でネックになる。教祖の真意とはよそにそれを悪用しようとするものがいるということと、ほとんどの信者が誤って解釈し信仰しているということを暗示しているのだ。そこが宗教、カルトといったものの危険性の訴えにもなっているのだろう。コメディとして映画の最後は見事に笑わせてくれるのだが、鑑賞した方は笑ったまま終わってほしくはない。 

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