2016年10月2日日曜日

エンド・オブ・キングダム(2016)

エンド・オブ・キングダム


~根絶~


〇はじめに
 味方を守る = 敵を排除する
 味方を助けに行く = 敵を殺しに行く

 この徹底具合よ。敵味方の判断。大統領とバニングは2人で逃走劇を繰り広げるわけだが、今は互い以外は敵であると。確実に信頼できる者以外は躊躇なく殺せと。そしてテロリストとは一切交渉しない。テロリストのアプローチを待たずして殲滅を開始する。




〇想起する作品
 「キングダム/見えざる敵」(2007)
 「ドローン・オブ・ウォー」(2014)


〇こんな話
 テロリストがいるなら殲滅すればいいじゃない。


〇根絶
 バルカウィという武器商人が商売のためにテロ行為で執拗に恐怖を煽り各国の武器購買意欲を加速させ販売市場拡大を画策していた。この諸悪の根源を抹消すべく、たった1人(一家?)のターゲットを殺すべく、爆撃により家族親族もろとも殲滅する。


 アメリカという多民族国家と欧州という移民難民を抱えるが故のテロリズムとテロ対策。互いに内通者やスパイの存在を匂わせている。

 各国首脳が一堂に会する上での危険性。厳重で厳戒な警備体制が敷かれるわけであるが、それは各国がそれぞれ別々に最善の方法をとってくることも意味する。故の混乱、統制の利かなさ。そこに付け込んだテロ。この描き方は迫力があった。




 今回は武器商人ということで武器というモノが1つテーマにある。武器は人を殺すモノであるが、逆に人を守るモノとしても機能する。最初の銃撃シーンでテロリストを殺していくのと大統領を守るというところが同義で描かれている。つまりテロリスト=悪と即決し殺すことを正当化しているわけである。


 では誰を守る(=殺す)のか? 誰から守るのか?

 ここを現場という一元的な判断から下すのは、大統領を守るという優先事項を考えればまだ納得は行く。

しかし、

 そもそも武器を使用して守ら(=殺さ)なくてはいけない状況になぜなったのか?

というところを加味すれば、最後の選択は何の解決にもなっていないことは言うまでもない。テロの原因となったものと同じ方法をとっている。しかしそれ以外方法が無いのではないのかとも思わせる。正義というものを定めると悪への対応が否が応にも定まっていく。勧善懲悪。悪の根絶である。
―――――
 確かオバマ大統領も悪は存在すると明言している。そして排除しなければと。
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 バルカウィは言う。アメリカが戦争を始めたのだと。アメリカが滅ぶまで戦争は終わらないと。これをそっくりそのまま還したカタチとなる。やられたらやり返す。これは一時の復讐という感情の先行を意味する。

 大統領が「今の殺しは必要があったのか?」とバニングに疑問を呈する場面がある。彼の中のとある感情を解消するがためのものであったことは明白だろう。本人も怒りを露わにし自覚している。しかし殺したのである。未曾有の事態で混乱を極める中、副大統領に「さすがバニング」と言わせるほどの手腕を見せている人間であるにも関わらずだ。




 元凶であるバルカウィ本人に言わせている。復讐というのは執念深く絶対的な力を持つと。

 そもそも今回のテロの原因の1つの解としては復讐者が残っていたことにある。復讐心を抱く原因として家族という繋がりがバニングを始め各国首脳でも描かれている。テロリストを殲滅するバニングも子ども部屋に監視カメラを5台設置するほどの溺愛ぶりだ。

 つまり、事態を収束させるに辺り復讐という感情を生み出させなければいいわけだ。新たな復讐心を生み出さないために、今ある復讐心を徹底的に根絶やしにすればいいわけだ。

 ならばその家系(血縁関係)諸共消し去ればいいわけである。妻が殺されたとして夫が復讐心を抱くならば夫も殺し、夫(父親)が殺されたとして子どもが復讐心を抱くならばその子どもも殺せばいい。それ以上に広がるのならばその潰していく枠組みこちらも広げていけばいいわけだ。

 これをうまく利用し、アメリカという国の強さを描いている。アメリカとは何なのか。ビルでも国旗でも無いと。お前らは家族という括りで戦っているのかもしれないが、我々は国という括りで戦っているのだと。愛国主義者の多いこと多いこと。それ故に自分が殺らなくても誰かがいずれは殺る。お前らには一生勝ち目が無いのだと。





 バニングは言う。「1000年後もアメリカは存在している」と。

 建国たかだか数百年でこの始末である。アメリカへの恨みと、アメリカという国と、果たしてどちらが大きいのだろうか。大きくなる可能性があるのだろうか・・・。


 敵が大勢いるから無謀だとする意見に対し、そんな数で足りるのかと言うバニング。

 バニングと大統領の2人が脱出できていないから爆破できないというSAS隊長に対し、爆破してくれないと脱出できないのだとバニング。

 見解の違いが所々で示されている。味方同士でほぼ正反対の見解なのである。

 これを味方同士だからこそかっこいいと思うわけであるが、これが敵対しているものだとすると、あ~言えばこう言う状態。ただの揚げ足取りに水掛け論。そりゃ諍いは無くならんよ・・・



 復讐の連鎖と関連してうまかったのはテロの原因となったところはもちろんだが、テロの標的となった国葬という舞台の演出だろう。国葬を開くきっかけとなったイギリス首相の死も仕組まれたものだったと。何が原因だったのか、何が始まりだったのかとその事態の前にまでアプローチさせている。まぁよくあるお話だけど・・・

 これを観せといてアレやっちゃうのよね~・・・






〇余談
 武器を売る手で、引鉄を引く手で子供を抱く(守る)。

 私が大好きな超人気漫画「BLEACH」にて久保帯人先生が残した言葉が過る。

  “剣を握らなければお前を守れない

   剣を握ったままではお前を抱き締められない”



〇最後に
 アメリカ絶対正義の下観る対テロリスト映画は犠牲を出しつつも最後は必ず正義が勝つという安心感があるからおもしろく観られるが、昨今の情勢を加味すればどうなんだろうなという感情が先行してしまう。いや逆にこのご時世だからこそのこういった映画におけるフィクションなのか・・・


 ではでは・・・


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