2016年7月4日月曜日

アート オブ ウォー(2000)

アート オブ ウォー[DVD]

~外交~

〇はじめに
 ウェズリー・スナイプスの作品ではこれが一番好き。次に「ブレイド」シリーズ。まぁそれくらいしか観てないっちゃ観てないわけだけど・・・


〇想起する作品
 「ミッション:インポッシブル」(1996)
 「ザ・インタープリター」(2005)


〇こんな話
 秘密裏に和平交渉を牛耳る。

〇外交
 諸外国との交渉をうまく進めるために裏で工作(脅迫)する組織。これはアメリカが正義だという前提ありきだ。最初にこれを植え付けたのはうまい。ラストの展開も活きてくる。


 そして国と国との複雑な関係の描き方も妙だった。どこまで意図しているかはわからないがひたすらに勘繰っていく。

 まず、さすが東洋人だと、あいつらは利口で教養があるという価値観を示していた。さらには白人が指示を出す側で、黒人が実行部隊として描いたのも意図してだろう。


 1つに、とある刑事がホットコーヒーに砂糖を入れ指でかき混ぜるのである。これを目撃した部下が「熱くないんですか?」と質問する。刑事は当たり前だろと言わんばかりの「熱いよ」という返答。

 ここに何を見るのか。


  熱いコーヒーを指でかき混ぜる

 という行為を目撃する。「熱い」と「指でかき混ぜる」というところが結びつかないのである。もしかしたら熱くないのかもしれない。しかしそれは聞かないとわからない。これを同じ国の人間で、しかも同じ刑事という役職で描いたのがミソなのだ。


 そして死体の山に関する言及。貿易協定が絡んでくるのだろうかと。刑事はわからんと一蹴。それだけだと何らどのような事態が関連してくるのかはわからないわけである。


 さらにはとあるメモが発見される。しかし読めない。これは言語の壁である。

 この言語の壁にておもしろいのが、通訳の女性がニール・ショーとのやり取りにおいて言い間違いをしているところだ。これは通訳の仕事の際にも犯しているかもしれないミスである。

 他人とのやり取りにおいて人はただ耳からだけでなく情報を仕入れる。顔を直接合わせその人物の表情や声質や声色からどんなニュアンスなのかも判断している。しかし同時通訳を介する場面ではただ言葉がそれを担うのである。耳からの情報だけが頼りとなる。

 その言葉にはどんな意味が含まれているのか? 

ではなく、

 その言葉はどのような意味で成り立っているのか?

というところが主眼になるわけである。ま~それを想定してスピーチの原稿なんかは表現に気を使うわけであるが。

 ニール・ショーとのやり取りにおいては顔を合わせ話の流れから間違いであると判断できているのである。

 しかし別の場面では、とある言葉に対し、それは脅しですか?お世辞ですか?という顔を突き合わせたところで、受け取り手によっては広義狭義に解釈できるといった面も観せていたりする。


 これを踏まえ銃撃犯を追跡するシーンを観る。仲間と連絡を取り合いながら追いつめていくわけであるが、ここで向こうの状況を把握するのに頼りとなるのが耳(無線)なのである。ここの観せ方は視点を交えた「ミッション:インポッシブル」の方がうまいのだが、後にもう一人の仲間のところで、目の前で殺されるという視点による情報の仕入れ方も入れているので、この作品も侮れない。勝手に補完されてしまうんだ。仲間が全員殺されたと。


 ・・・とまぁラストに向けて事態は二転三転するわけだが。国と国との外交というものの複雑さを作品全体に細かく散りばめられているために難なく受け入れられると言いますか、実際今現在いつ手を切るのかはわからないが中国資本は相当に当てにされているわけでね。


 同職でのやり取り、捜査状況、言葉の壁、通訳、情報伝達手段、

 吹替えだとこの辺りが本音と建前という言葉に集約されていた。動機となる「アート・オブ・ウォー(孫子)」より、外交における行き違いや複雑さの描き方の方がうまかったな。いやまぁそれを踏まえての動機なんですけどね。


〇最後に
 太っちょ刑事が有能なんだけど不遇なんだよね。最後はそれでもっても粋な計らいをする。こういう人間に、ポジションに憧れる。

 ではでは・・・




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