2014年10月18日土曜日

ノイズ(1999)

ノイズ[DVD]

~省エネ侵略~ 

 〇はじめに
 笑顔が不気味な映画です。ジョニー・デップだけに。 

〇こんな話
 宇宙飛行士の夫が宇宙での任務から帰ってきてから何か様子がおかしい。船外活動中に爆発が起き、交信が途絶えた時間が存在する。その時に何があったのか。一緒に生還した宇宙飛行士はおかしくなり死亡(殺害?)する。そして妻も自殺(殺害?)してしまう。夫にその時何があったのかを聞いてもはぐらかされるばかり。そして妊娠。はてさて・・・。 

・ざっくりと
 地球外生命体による省エネ侵略のあり方を解説するお話。

〇侵略 
 宇宙には何かいる。二分間の出来事の録音テープでひどく怯えている二人の会話が聞こえてくる。宇宙飛行士はあらゆる訓練を受けており、常に冷静に対処できると。そんな二人が怯えるとはよっぽどの事が起きたに違いない、と調査官。そして二人の声以外にノイズが入っている。それは入るはずのないものだった。ここから侵略のあらましがわかるのだが・・・。

 侵略に星間航行など必要ない。わざわざ侵略先に出向く必要などなかったのだ。ただ思念を飛ばして、器(身体)が来るのを待ち、乗っ取ればいい。宇宙に出てくる・出てこられるような個体は優秀に違いないと。

・・・確かに、と最初は思ったが、これは無理がないだろうか。外部からの侵略よりも、内部から侵略が侵攻していた方が効率的であるのはわかる。いきなり異種間遭遇によって軋轢が生まれるよりも、直接の遭遇が無いまま、だんだんと侵略する対象を侵略者に対して都合のよい方向に持っていき、気付いたら侵略されていて取り返しがつかない、とした方が。


~なぜ我々は地球外生命体と遭遇しないのか?~
という理由に、同じ時間というか時代に存在できていないというのがある。地球型惑星は多くあり、生命が存在可能な星はいくらでもある・・・と言われている。広すぎる宇宙で地球だけに(知的)生命体がいるのはおかしい。しかし宇宙は今の人類の手に負えるものではない。何が言いたいのかというと、自尊やうぬぼれかもしれないが、今の人類ほどの知能、技術を持ってしても、宇宙航行は(公に)行われていない。そこまでの進化及び技術革新には時間がかかることが伺える。そしてそこまでの技術を有する文明もいずれは滅びる。さらにはその域に到達できず滅んでいく文明もさぞ多かろう。そんなことを考えると、やはり宇宙航行を行える技術力を有する文明をもってしても、同時代、同時間に、同程度以上の技術力を有する文明に遭遇することは難しいのだろう。しかし確率は低くとも0ではないわけで、いずれは出会うことになるのだろう。地球でかもしれないし、我々の知らない別の惑星でもうすでに異種間で出会っているかもしれないし、過去とも未来とも・・・。
 この映画における侵略者の思念を飛ばすという方法は、とても効率的且つ合理的な侵略方法であるとはいえる。・・・のだが、ラグを考えていない。まずは先ほどの文明が同時代に存在しえるかというラグ。存在しても衝突までに至らない場合もあると。

 次に思念波とその思念波を操る本体とのラグ。これを詳しく考えてみたい。どれだけの距離を障害物を縫って飛ばしているんだ?って話ですからね。本体とその思念が繋がっていれば、自分の意思で動かすことが可能なので回避可能であろう。しかし、思念と現地(本体)は繋がっているからといって、同一時間になりうるのかという問題が出てくる。同一時間というのは、自分の意思と行動が為される時間が同一時刻に処理されるのかということ。意思の伝達速度(つまり反応・反射)にも限界があって、電気信号であるから光速としよう。秒速30万キロメートルと。侵略者の星が地球を中心に30万キロメートル圏内であれば、一秒以内に対処できる。いや、往復だから2秒以内か。待てよ、認識、反応できても行動する上での判断にはまた時間がかかるから2秒以上は確実にかかる。
(注、参考までに言っておくと、我々が地球で目にしている太陽の光は8分前に発されたものである。太陽までの距離は1天文単位=1億5000万キロメートルである。)

 話が逸れるが前におもしろい話を聞いたので少し。(設定は曖昧です)
「宇宙戦艦ヤマト」の話で、ヤマトと地球のやり取りで何光年も離れている間を光速通信で会話が為される、成立する。実際には通信に複数年かかる距離であるので、何かしらの問いを投げかけると、今欲しい答えが何年後かになってやっと返って来ることになる。答えが来た時には、そんな状況とっくに過ぎ去ったはと。そんなこんなで劇中のようにリアルタイムで会話が成立するわけは無いのだが、成立しているということは・・・。
 地球側はヤマトが飛び立った後の状況、つまり未来を的確に予測していたということになる。どれぐらい的確かというと、いつ・どの座標を通り・どのような問題に直面し・どのような解決策が考えられるか、というようなこと全てを想定しているくらいだ。ヤマトとの会話をリアルタイムで成立させるには、ヤマトが交信を必要とする前に地球から電波を送っておかなくてはならないのだ。そしてヤマトが交信を必要とするその時にちょうど届かなければならない。
一昔前の流行に乗っけて簡単に言うと、
ヤマト側 「交信いつやるの? 今でしょ」
地球側 「交信いつ来そうなの? 〇年後くらいじゃな~い、だから今送信っと・・・」
みたいな感じ。つまらんし、逆にわからんか。
地球を救うという目的の下、未知の世界に飛び込んでいく者たちに対して、全てを知っていたかのような地球側の行動。笑えませんか。ヤマトの冒険が何か不憫に思えてならない。


図1 出発時
 距離が近いので通信に時間がかからず会話が成立する。


図2 数ヵ月後・数年後 Part1
 ヤマトが順調に航行を続ける中、地球は未来を予測して行動を開始する。場合によっては通信が不可能となる。

図3 数ヵ月後・数年後 Part2













 図2で地球が予測した場所をヤマトが通らず通信できず、地球にしてみたらヤマトが危機に陥っていることなど知る由もない。そして次の予測へ(しかしここでは予定地の方にもう送っていなかければならない)。ヤマトは地球が応答しないことに困惑。もしかしたら地球の位置すらつかめていない可能性も・・・。そしてここから通信の見事なすれ違いが始まる。
注、これは最悪パターンです。

 通信がうまくいった場合を以下にざっくり書く。

 地球側はヤマトが交信してくるであろう日から何年か前の現在において、想定しうる状況しか送信できないわけです。会話の内容に関してのアドリブが効かないといえばおもしろいだろうか。会話の間合とか、船員の状況全てを勝手に想定しているわけです。仮にある船員がどこかで死んだとしましょう。地球側はその人物を生きていると想定して、その死んだはずの人物に執拗に話しかけてくるのです。ヤマト側が事情を説明しようとも、地球側は決してそれを受け入れてくれないわけです。想像できるでしょうか、この何とも言えない重苦しく、しかし鑑賞者としては笑いを堪えきれない雰囲気を。あの劇中に起きる感動だか悲劇的な艦長の死が、一瞬にしてコメディに変わってしまう様を。
ここでヤマトの船員たちの声を聞いてみましょう。
A:「あれ、会話ちぐはぐじゃね?」
B:「この人、まるで話聞かねえ」
C:「僕(私)が今しゃべっているんだ!!」
D:「まだ何も言ってないのに、何で勝手に頷いてるんだろう」
E:「何これ? 怖い・・・」
F:「艦長、艦長って、・・・艦長はなぁ!!・・・」


 話を戻そう。勝手に盛り上がりすぎた。

 状況は異なるのだが、そのラグを少しでも感じていただくために、自身の体での体験を思い起こしていただきたい。足をどこかの角にぶつけたとき。小指でいいですよ。ぶつかったとわかる(衝撃が走る)と、痛みを感じるのとで若干の誤差はないだろうか。そして痛みを口に出すのは痛みを感じた後だ。
「ぶつかる → (ぶつかったと)認識 → 痛み → 「いってえええ」と叫ぶ」
ってな順か。たまにぶつかった瞬間に痛くなくとも「痛っ」と言う習慣の人もいるだろうからその人は例外としとこう。自分の体ですら反応と痛覚には時間差が存在する。そこから体を伝わる信号には速度が存在するということをまず理解いただきたい。信号が伝わる距離が短いからぶつかったのと同時に反応できる。そして伝わる速度が単純に反応する信号の方が早いから、衝撃を先に認識できるだけで、後から痛みは追いついてくる。反応はできても対処できない、その状況を理解しなくては。情報の後追いが起こると言えばわかりやすいか。この感じと似ているんですよ。思念と本体とのラグは。

 つまり、思念(侵略対象である星)と本体(現地)の時間にはズレがあるわけで、仮に侵略が成功したとしても、それが本体側で成功か失敗かの判断がつくころには、すでに文明が滅んでいるのかもしれないということ。
「侵略成功or失敗(今起きてる) → 送信中・・・ → 現地到達(何年後か)」

 よくよく考えると人間が宇宙に出てきたら、身体を乗っ取るというオートプログラム的なものであれば、本体と繋がってる必要もないか。そしたらラグとか関係ないしな。しかし思念からの情報はどうやって得ているのだろうか、という疑問が新たに湧きおこってしまう。それは・・・、まあいいだろう。

 彼らは宇宙航行・星間航行を選択せずに、わざわざ思念を飛ばすという手段を取った。それは技術的に物理的なものを移動させることが不可能だったからか、可能だったが労力的な問題で省エネ且つ効率的・合理的な手段であったかのどちらかである。後者だったとして、地球でお偉いさん方が方法を選択するとする。危険で予算のかかる方法と、安全且つ省エネな方法とどちらを選択するだろうか。きっと彼らも同じ状況だったのではなかろうか。
 侵略という行為に関する理由が、文明の存続がかかるという切羽詰まった状況であれば、そんな悠長なことも言ってられないから、余裕があったと捉えるならば、侵略が趣味とかそんな感覚なんですかね・・・。


〇女性は子宮でモノを考える 
 夫が妻に僕はお前の中にいると言い、そこを乗っ取ったとお腹を指差す。つまり双子が存在する子宮を差す。これはおそらく「女性は子宮で考える」といったところに関係するのではなかろうか。「男は頭でモノを考え、女は子宮でモノを考える」と何かしらにつけて言われる。この文言は「男は理性的に、女は本能的にモノを考える」という意味で使われる。 妊娠中に中絶を試みるが結局できなかったり、子供が生まれたことで父親も新たに迎え入れており、最終的に母親自身が、双子が宇宙飛行士になることを願っている。女性の本能的な部分を侵略しているととれはしないだろうか。夫の方は宇宙飛行士になるであろう子どもたちのために、宇宙船のツインシステムを開発しており、子供たちの未来絵図を描いている。今ある命を守ろうとする母親と、将来的な命を守ろうとする父親。そんな男女の対比を描いているのではなかろうか。

〇最後に
 侵略という単語を聞くと、やはり侵略者が現地に赴くことを前提に考えてしまう。外部からの侵略然り、内部からの侵略然り。その点でこの映画は侵略映画としてうまく捻った作品だ。楽しまれたし。

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