2014年11月12日水曜日

ザ・ホスト 美しき侵略者(2013)

ザ・ホスト[DVD]


~適者生存~ 

〇はじめに 
 侵略映画としてはきれいすぎる。恋愛映画としてはお粗末すぎる。しかしSF侵略恋愛映画とミックスして考えたときに、この映画は新たなるジャンルを得る。そこがすばらしい。 何てジャンルだろ(白目)??

〇こんな話 
 地球はかつてないほど平和だった。しかし、地球を支配していたのは人類ではなかった。地球を取り戻すため人類は密かに活動をしていた。そこにソウル(侵略者)を入れられた人間が潜入する。はてさて・・・。 

 〇想起する作品 
 「鉄腕バーディ」 
 「光る眼」(1995)
 「フォーガットン」(2004)
 「インベージョン」(2007) 
 「V」

〇侵略者 
 侵略者は寄生型のエイリアンである。彼らは人の中に入り込み、その寄生した人間の意思を抑え込み、新たな人格を得る。主人公は特殊な例であり、主人格は乗っ取られるものの、完全には制圧されていない。頭の中で野次を飛ばせる、会話くらいの抵抗は可能である。

〇適者生存 
 ラストが一癖ある。侵略者を人間とは異質であるということを決定づけるのだが、それをもってしても両種は共存できるという何か前向きな方向に持って行く。この、愛は種という障害を乗り超られる。というような一見感動的なラスト。なんと愛はすばらしい。別に感動的なままでも良いのだが、それでは私個人としてはあまりおもしろくはない。勝手にほじくり返そう。

 恋愛要素を絡めることで、彼らは自分の意思で共存を選択したととれる。しかし、実はこれはただの自然界における適者生存、自然淘汰といったことでしかないのである。よく思い出してほしい。シーカーとされる人物が、ソウルを取り出された後どうなったかを。人類とは共存できないからと別の星に飛ばされたではないか。共存できる者は地球に残り、共存できなかったものは他の惑星へ飛ばされる。異種間だけでなく、地球人間でもよく見る光景ではないか? 仲良しグループ、派閥などなど。共通の目的や思想の基集まった集団。方向性が違う者たちを排除していくことで完成する閉じられた世界。同じ時は良い。しかしそれを違える時が来たらどうなるのか。ある集団、お国同士、地球規模で起きてる事を、ただ宇宙規模で種を超えて表現しただけではないか、と冷めた目で見ることもできるわけで。 
 簡単にまとめると、この一見愛は種を超えて育めるというのは、仲良くできる連中だけで生きていきましょうと、そして仲良くできない奴はどこかへ行ってくださいと。究極独裁体制に近いわけです。それを愛とか・・・、と思えてならないわけで。

 ここで冷静に物語を見つめてみる。進化論に関して少し触れたので、彼らの歴史からどう進化してきて、これからどう進化していくだろうことを探ってみよう。この表向き愛は種という壁を超えるといういわゆる共存という行為は、彼らにとっては進化のための選別だったのかもしれない。先ほどは地球人と共存できるかという意味で、適者生存を説いた。しかし侵略者という種のみで適者生存を考えた場合、他の惑星に飛ばされた者たちは共存できる場所に辿りつくまでタラいまわされるということになる。それぞれに合った種を見つけなくてはならない。今までは器を制圧することで為し遂げてきた侵略が、死した器に対して新たなる命を吹き込むことで、地球においては共存という形に変わる。いや、別の惑星でまた侵略という形態に戻るかもしれない。しかし人格を支配する力が弱まってきていることも問題視していた。これは支配による共存、彼らにとっての生存の術の限界を示しているのではなかろうか。いや彼ら自らが支配による生存以外を選択しはじめたととるべきなのか。何にしろ侵略者に何かしらの変化が起こったことは確かである。その先に何が待ち受けるのかは誰もわからない。最終的に滅ぶこと以外は・・・。   

〇最後に
 地球人とエイリアンの対立や共闘・協力の演出により、最終的に恋愛観を広げ、愛は種という障害を越えるという何とも感動的且つ、希望を見出すような表現が為されている。同志を募っていくと表現すれば聞こえは良いが、劇中の関係性は前の項でも述べたが、排除されていく者がいるからこそ築ける世界なのである。それを愛の中の美しい部分だけを用いて表現することで、鑑賞者はその美しい部分だけを受け取り、愛が全て、愛ってすばらしいなどという見解を持つに至ってしまうことだろう。そんなことでは決してない、と少し皮肉る形で話を進めさせていただいた。考慮されたし。

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