2017年6月15日木曜日

30デイズ・ナイト(2007)

30デイズ・ナイト


~ムラ~


〇はじめに
 「彼岸島」みたいに描ければなぁ~・・・ 丸太等のネタ要素ではなく、辿りついた場所がどんなところなのかという立地条件等を踏まえさせる導入をよ。そしたら傑作だったんじゃないかなぁ知らんけど。



〇こんな話
 30日間極夜でヴァンパイアとサバイバル生活。



〇村
 白夜とは逆の極夜という太陽が昇らない現象とヴァンパイアとを組み合わせたのはおもしろい。絶対的に人間が不利であるという状況を容易に認識できる。



 隣町まで128キロ、村人の人数がカウントされていたり、極夜になるからと町を離れる人間が描かれたりと、閉鎖的な「ムラ」であることを印象付けている。少なくとも30日間は孤立無援であり、もうあとはマイナスにしかならないのだろうという不安の煽りはうまい。

 その大地に上陸するのに飛行機だか舟だかと陸路にて到達するのは不可能であり、さらにはその発着の拠点となる場所に行くには車が必要不可欠。これだけで孤立感は十分だろう。しかし外界との接点をこの限られた交通手段においてしか匂わせていないのが仇となっている。「ムラ」から出ていく人間は描かれるが、我々が知る外界からこの「ムラ」へと入ってくる人間が描かれていない。これのおかげで外界とこの「ムラ」とで目的のために用いる手段の差別化が図られていないのである。外界ではこんなことが可能だったにという羨望と、「ムラ」でしかできないという逆も然り。

 犬というアイテムをただ殺されたとするだけでなくもう少し有効活用するべきではなかったか。犬が雪国においてどのように扱われているのか。交通手段との兼ね合いで犬ぞりの雪上での機動力は絶対お披露目するべきだっただろう。

 生活基盤(インフラ等)は整備されており、そのシステムの拠点となる場所が襲われることでさらに閉ざされた「ムラ」であるとしたいのはわかる。しかし世界の上限が彼らの生活拠点である「ムラ」でしか構築されておらず、しかもその「ムラ」の一部を見聞きしたに過ぎない状況で事態へのアプローチを促され、劇中のサバイバルがその「ムラ」という世界を広げていくことで描かれては、「ムラ」の不便さというところは伝わり辛い。故に閉塞感をあまり感じられずむしろ広さを感じ「ムラ」から逃げられないという緊張感を覚えにくい。ムラムラしてきた・・・

 やり様があるという、選択肢を狭めるはずの演出が逆に広げることに機能してしまっているのである。これでは折角の孤立無援のシチュエーションは全く以て活きてこない。




 ヴァンパイアという題材において日が昇れば恐怖から解放されるという常套句が、極夜という現象の前では意味を為さない。一夜明ければという緊張感を少なくとも30日間は陽の目を見なくすることで持続させようとするのは腕の見せ所であった。如何に状況を打開していくのか。「ムラ」という特性で事を如何に有利に運ぼうとするのか。しかし先ほども書いたかが閉塞感というものがどうも微妙に感じ、そのシチュエーションにて繰り広げられるサバイバルには別段何も感じることはない。最終手段に至る覚悟もそのおかげで中途半端に感じる。



 その「ムラ」という閉塞感故のサバイバルというのは、立地的な条件由来のものではなく、皆顔見知り以上であるという閉塞的な「ムラ」ならではの「家族」という括りでのドラマに重きを置きたかったがためなのだろう。ヴァンパイアが最初の襲撃にて狩りの際は仲間にしてはならないとするのも「ムラ」という構造の対比だったのかもしれない。主人公は独りになりたいからと移り住んできた人間にも執拗にちょっかいを出している。あいつも「ムラ」の一員であるのだと。しかしそれならば対となる人間たちの「ムラ」における明るい日常風景をもう少し丁寧に描いといた方が・・・といった感は拭えない。映画という尺にまとめるには厳しかろうが。そうすればまだ家族のために自身を犠牲にするという主人公の最後の選択が際立ったはずだ。そして最初と最後に眺めることになる夕日と朝日のコントラストも。希望だった太陽が何を意味することになったのか。



 う~ん総じて微妙・・・



〇最後に
 割とフィールドが広いんだよね。この町という広さに対して如何に行動が制限されるのかという狭さを覚えさせることが鍵だっただろうが、残念ながらうまく行っていない。ただそれは物理的なサバイバル面でのお話で。家族という括りにおけるドラマに目を移せば精神的な面での選択の幅の絞りはうまく、それを以てラストの朝日を眺めてみればどこかしみじみ。続編もあるようで。題材はおもしろいからまぁ気が向いたら・・・


 ではでは・・・


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