2015年12月21日月曜日

orange-オレンジ-(2015)


~パラドクス~



〇はじめに
 凝ったSF好き、特にタイムパラドクスに興奮を覚える人間は観ない方が良い。B級SF映画より話が練れてない。しかし友情ドラマがだ~い好きという方。どうぞ観てください。



 人によるだろうが・・・

 これは土屋太鳳の役じゃない。話し方、口調に難ありではないだろうか。せめて手紙におけるトーンと、現在におけるやり取りのトーンは変えた方が良い。未来における彼女は1つの帰結を迎えており、全てを知っているという体で語り始める。それに対して手紙を読む側、現在を変えていこうという体の人間が同じ口調ではまるで意味が無い。いや意味合いが異なってくる。翔を助けたいという気持ちよりも、自分が翔とつながりたいという下心あざとさの方が際立ってしまうんだ。

 おそらくぶりっ子と、内気(でいいのかな?)な人間を勘違いしている。違いをわかっていない。おとなしめの声を作り、たどたどしく話せば良いってもんではない。見抜く人はすぐ見抜くよ、コレ。



〇想起する作品
 「過去からの日記」
  ・・・世にも奇妙な物語で鑑賞。
 「栞の恋」
  ・・・上に同じ。
 「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」(2011)
 「桐島、部活やめるってよ」(2012)
 「だいじょうぶ3組」(2013)
 「幻肢」(2014)


〇こんな話
 10年前の私に手紙を書く。今の旦那にも、生活にも別に不満は無い。子宝にも恵まれた。でも、やっぱり翔が好き。翔と・・・、合体したい。

 こんな下心を感じる作品。もっとピュアな目で見てください。私のような下衆い方お断り。


 
〇パラドクス
 現在を、未来を変えようと躍起になる彼らと、友情パートを描きたいが故に未来が先に立ってしまうパラドクスが何とも観ていられない。

 しかしやりたいことはわかる。友情・恋愛パートの力の入れようは伝わる。リレーの件は周りが手加減しているのが見てとれながらも感動してしまったくらいだ。バトンを繋ぐのである。走った者たちから、走ってきた者たちから、これから走る者へと。過去と未来を繋ぐのである。

 
・現在パート
 10年後の私から手紙が送られてくるという設定。これはすんなり受け入れた。条件は何なんだ? 場所なのか?モノなのか? おもしろいじゃないかと。しかし手紙を読み始めた途端、SFネタの崩壊がはじまったんだ。

 皆さんは、人の名前で 「翔」 と書かれていたら何と読むだろうか? 会ったことも無い人の名前でだ。

 疑問に思った方はどれぐらいいるのだろうか? 

 菜穂は何の迷いも無く「かける」と読み進めるのである。全国の「しょう」君を敵にまわしたのである。

 ここはボかして良かった。苗字だけ読んで、翔の自己紹介が入るとかで。いっそ読まなくてよかった。これのおかげで、先ほどの変わらない口調とも相まって、現在と未来と、どちら側の目線なのかもわからなくなるんだ。

 仮に現在目線だったとして、「かける」と読めたことで、手紙を書いた私が存在する10年後の未来と現在とが時間軸として繋がったともとれる。しかしそんなことは考えていなかったのだろう。一切触れられることは無かった。

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 これを意識させていますよって感じを入れるならば・・・

 ラストはね。また手紙が届くとかにしておけば良いんですよ。え?翔の命を助けられたのに未来を変えられなかったの?と。逆もあるでしょ。翔は今も生きていますという手紙かもしれない。不思議な現象を目の当たりにした彼らだ。同じことをしようとしても何ら不思議ではない。ハッピーエンドにもバッドエンドにもとれる。さらには翔の死に方が、時間が変わっただけである。さらにさらに翔ではない人間が死んでしまう。ってな具合に様々な分岐ルートも妄想できるでしょと。パラレルネタがどんどん広がるでないの。SF映画だったらこうしたのだろう。

 手紙を「バック・トゥー・ザ・フューチャー」における写真みたいな設定にしておけば・・・
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 未来からの手紙により現在を変えていこうと躍起になる主人公と、過去を変えたい、後悔を消したいとする翔の人物対比はうまい。原作の賜物なのか。しかし判断と行動がまるで伴っていないことにさらなる疑念を抱かざるを得ない。

 まず未来からの手紙を信用する要素が薄すぎる。ま~それは最初の「翔」読みで私は勝手に補ったわけだが。それなのにどんどん信用を深めていく。にも関わらず対策が曖昧すぎる。全部中途半端なんだ。

 一番はやはり最後だろう。翔死亡ルートは確定しているわけで。その状況で、日時が確定している。場所が確定している。あなたはどんな対処を、対策をとりますか。その日にその場所に行かせないというのが一番の策ではないのですか。待ち合わせて・・・ 24時間監視体制でも良いくらいだろう。夜通しパーティやってろよと。
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 携帯ガンガンつことるし。プールで花火の件台無しよゲラゲラ。結局下心。菜穂の計算高さが際立ってしまう。
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 この行動がルートが分岐したことによる彼らの迷いだったのかもしれない。でも本気で救おうと決意したんだよね。念には念を入れようよ・・・

 道の真ん中で最後悠長に抱き合ってるし。全員死亡ルートあると不安になったではないか。



・未来パート  
 現在ではなく未来の彼ら側にも言えることなんですよ。

 10年後の彼らの現在は結果的には変えられない。後悔は消えないというパラレルワールドネタで解消しているととってもいい。ただの試みだったと。彼らに成功したか否かはわからないわけで。話半分、冗談だったと・・・

 しかし本当に過去を変えたかったのなら。そんな本気な設定だったでしょと。

 ここでの疑問。

 最大の分岐はどこだったのか?

 転校初日?のお誘いに最初重きを置いていた。しかし最終的には翔を死なせないでくれと。翔を死なせない事が最大の分岐だった。これを防ぐためにひたすらに情報を散りばめていった。ラストがそのピークに達するように。

 しかしだ。一番翔を死に近づけた事象は何だったのかを思い出して欲しい。転校初日における分岐でしょ。母親の自殺でしょ。なぜここをピークに持っていこうとしないのか。高校1年目から過去と連絡取っときゃいいじゃん。11年前の私へ、で良いじゃん。

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 それかですよ。実は11年前から手紙は届いていて、それに恐怖しトラウマがあったとするとかはどうだ。あれ、これデジャヴだと。どっかで聞いたこと、読んだことあると。そうだ封印したあの手紙だと思い出す件を入れてもおもしろそう。普通捨てるか。捨ててても良いんですよ。欠落した部分があるというスリルにも繋がるわけで。

 「恐怖新聞」ぽいな。

 定期的に送られてくる理由も明確ではなかった。あれ?届いたのって結局一通だったんでしたっけ・・・? 
 定期的に送られてくるとして、順番通りに届かないという設定でもおもしろいではないか。並べ替え、パズル要素を取り入れる。先ほどのホラー要素も活きてくる。
・・・日記をつけてる女子だからな。日付がそうはさせないか。

 でもでもでもでも。月日は書いてあるとして、年までは中々書きませんよね。頭行きませんよね。年を跨いでいれば、日付だけで揃えていたとすれば、パズル要素が活きる活きる。

 あれ? こんな内容どっかで見聞きしたな。 何の作品だったか・・・?

 あれだ、「この彼女はフィクションです」だ。渡辺静先生の。


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 私がこの作品を鑑賞して導き出した、10年後の彼らがすべきことだったであろう最短・最適ルート。

 彼らにとって一番の得策は、翔と関わらない、だったのだ。11年前からアプローチをはじめ、それを徹底していれば翔と接点を作らないことは可能だった。そうすれば翔の母親は自殺をせず、最大のダメージを与えなくて済んだのだ。しかし彼らはなぜか翔と接点を作り、いっぱい思い出を作ろうとした。あわよくばくっつこうとするとある人間のエゴもはたらいていた。
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 パラレルワールドネタで未来の彼らの後悔は消えないとなっていた。それはつまり、思い出もまた消えないということである。花火に必死こいていた理由もさっぱりだったんだ。未来の彼らは全ての思い出づくりを失敗していたのか??
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 翔に関しては母親の心配の種でもあったのでね。友達とうまくいっていないってな過去もあったわけで。この流れである必要はあったわけだが。翔の救いにもなるわけですし・・・

 それならば尚更もっと早くからアプローチしてればね。母親死なない翔と愉快な仲間たち総じて超ハッピーエンドが辿れたわけで。ま~そうなるとまた次の項目における「後悔」ってなところがパッパラパ~になるからアレなんだけど。


 これらを踏まえて究極の曲解ね。転校初日の分岐。これが翔に大ダメージを与えるわけだが、菜穂はこれを防ぐ気はさらさら無かった。なぜなら、これがひたすらに翔と接近するきっかけになるからである。それを餌に慰めてあげていけばと。さらには失敗した自分からのアドバイスもある。勝ち確である。人生イージーモード。翔、ゲットだぜ!


 どうだろう。見方が変わってきた方がいらっしゃらないだろうか。

 そうです。私は究極にひねくれています。



〇後悔  
 翔の死を防ぐということの重み。この作品では後悔という言葉を使っていた。後悔を消してくれと。

 パラレルワールドネタで未来の彼らの後悔は消えないとしたのはうまい。背負って行くものだと。しかし現在。ただ失敗を恐れている人間がビクビク生きているととれなくもない。背負うべき罪やその重みを避けて通る。それは果たしてどんな人生だ。経験(値)の積み重ねが無い人間になるのではないのか。
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 ヒトカゲのままでカスミが倒せますか? 他のモンスターを選びましたか。そうですかバタフリーを育てましたか。それはタケシでしたか。
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 もっと現在の彼らに、この辺りの苦悶を表現してほしかった。まずはその手紙を信用していいのかというところ。次に未来からの指示を実行してのその影響や余波。そしてその誤差による彼らの分岐選択の葛藤や衝突。もっとできたろうに・・・

  後悔を消してくれ、後悔をしない・つくらない、このスタンスをもっと綿密に練ってほしかった。

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 そもそも序盤の見え方として、手紙の内容が役者の演技のフォローにしかなってないという私の主観が先に立ってしまったことが邪魔してるのもあるんですよね。
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 ま~、もう手紙が届かないというところが、これからは現在の彼ら自身で選択をしていかねばならないと、未知の世界に挑んでいかねばならないと、ってなカタチにもなるわけだがね・・・



・手紙
 
 未来側は私たちのようにはなるなと、過去の自分たちの後悔を消してやろうとする。優しさからだろう。しかし現在から見たら? その情報の信頼性が高かったら? どんな気持ちが沸き起こるのか。「バック・トゥー・ザ・フューチャーPART2」を観ていませんか? 未来の情報がたんまりあったら。何に使おうとするのか。エゴを優先し始めるのである。邪な感情が出現するのである。ぐへへ。

 おそらくこれの抑制として原作には手紙という存在が大きくあったのではないだろうか。映画の中にも兆しはあった。手紙が届いているのは1人ではないと。未来の改変が特定の個人だけの利益ではないと。5人+翔、全員の総意であると。

 ま~そこまでやったとしても、翔にあそこまで固執する意味が理解できないが。友情や恋愛ものに理屈なんて持ち出すことがそもそも馬鹿げてたりするんですがね。この作品はどうもしっくり来ない。別のところで粗が目立ってしまう。



・参照映画
 「ファイナル・デスティネーション」シリーズ
 「バック・トゥー・ザ・フューチャー」シリーズ
 「12モンキーズ」(1995)
 「タイムシーカー(1999)
 「タイムマシン」(2002)
 「プライマー」(2004)
 「デジャヴ」(2006)
 「LOOPER」(2012)
 「ミッション:8ミニッツ」(2011) 
 「プリデスティネーション」(2014)

 ここら辺が見やすいんじゃないでしょうか・・・


〇余談
 山崎紘菜えがったな~。TOHOシネマズ近くに無いからな~・・・。上映前に毎度見られるのはうらやましいなぁ~。



〇最後に
 オレンジって何だったんですかね・・・ 何か言ってましたっけ? 花言葉的な?

 はじめにも書いたが、友情ドラマとしては中々に熱いモノを感じる。しかしSFネタを気にしだすと・・・。 何を期待されるかはあなた次第。

 長くなってしまった。これにて失礼。

 ではでは・・・

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