2014年8月5日火曜日

アイアン・スカイ(2012)

アイアン・スカイ[DVD]


~井の中の蛙~

〇はじめに 
世間的に浸透しているであろう複雑で混沌とした世界情勢を誰も明言しないし認めない。そんな世界情勢を、実際のところこんなんでしょと皮肉を加えて見事に代弁してくれる作品。なぜ誰も事実を伝えないのかという疑問に、皮肉を交えて答えてくれる。 

〇こんな話 
月の裏側に調査に行ってみると、そこにはナチス帝国が広がっていた。はてさて・・・。

〇鎖国 
チャップリンのナチスドイツに対する風刺映画を見事に都合の良い解釈に持って行くなど、制限された教育をされてきたが故に育つ無知な存在。固定観念により視野が狭くなっている。 無知の者を騙すのなんてそれっぽいことを言えば容易。地球侵略を目論むものの調査不足、情報不足。日本が鎖国において外国に置いていかれたように、彼ら月面のナチスドイツの者たちも見事に時代遅れ。おそらく各国同士の関係や争いにおいて技術革新等日々進歩を遂げる者たちとの比較を描きたかったのだろう。スマートフォンと巨大コンピュータの比較が良い例だ。しかし博士がスマホとコンピュータをつなぐモジュール(USB)を作るなど、いずれは彼らナチスドイツも辿りつく境地と言うことなのだろう。技術革新の速度が違うだけで。ちなみに、コンピュータをつなぐ装置はユニバーサル・システマティック・バインディング(USB)としている。 

ナチスドイツを徹底的にディスってはいるのだが、最終的にはそれを含め地球における各国の関係、偏見、差別等も皮肉っている。ナチスという共通の敵を倒す時には手を組み、倒したら倒したで、月の資源や利権もあり、再び争いを開始する。ナチスドイツに対しては、ナチスと言う一つの組織における小さい視野から見てるお前ら馬鹿じゃね、と地球側から皮肉っている形になるのだが、最終的に地球人同士で争いを開始する様を宇宙から地球を眺めさせる構図で見せることで、地球と言う小さい括りで考えてるお前ら馬鹿だよね、と皮肉っていることになるわけです。ナチスドイツが地球と言う括りで見た場合、井の中の蛙であったように、宇宙から見た場合地球全体が井の中の蛙なわけです。

〇信用度 
ナチスドイツ側で、月から地球に行き、戻ってきた者は一人もいないと言われている。それはどういうことか。地球の方が住みやすくナチスのことなど忘れ、幸せな生活を手に入れたのか、やはり死んだのか、それとも・・・。
地球はロズウエルやらアポロ計画やら陰謀論に溢れている。地球側のお偉いさん方の話の中では、月の裏側がどうのこうのと馬鹿にする発言が見受けられた。公に発言する者には知らされない事実があるという演出もあった。大統領は無知であるが、その側近の者は知っており、大統領に助言をするといったようなシーンだ。それを基に考えると、情報の制限が為されていると言っていいのだろう。公に出る者には知らされない事実がある。知らなければ不必要に、不用意に嘘をつくことはないといった対処である。
主人公がホームレスになり、月の裏側の事実とナチスの陰謀について叫びまわっているシーンがある。そういった発言の信用は立場ありきで考えられる。大統領といった者が発言するのと、ホームレスが発言をするのとでは格段に信用度が違う。どんなに声高に叫ぼうと誰が信用しよう。彼と同じようなことが月からの使者には起こっていたのではないだろうか。地球でナチスドイツが月の裏には存在するなどという突拍子もない発言をしようと受け入れられるわけはなく、そのままどこかへ消えてしまっていったのだろう。
真実を知るホームレスと、裏事情を何も聞かされていない大統領。あなたはどちらを信じるのか。我々に見えているものはホームレス、大統領といった立場、経歴だけだ。事実以外の要素(主に経歴)が介入することで、事実・真実が必ずしも信用されるとは限らないし、嘘がまかり通る場合もあるといった状況が発生する。そんな社会も見事に皮肉っている。

〇最後に
ナチスドイツをディスってるのかと思いきや、現代社会全体を見事に風刺しているという始末。頼む、もっとやってくれ。

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