2014年8月5日火曜日

ワンチャンス(2013)

ワンチャンス[DVD]


~才能の認証~ 

〇はじめに 
 ワンチャンスとは、たった一度きりしかなかったチャンスではなく、ポールが人生を大きく変えることとなった数多くあったチャンスの中の一つ。 

〇こんな話 
 ポール・ポッツの半生に基づくお話。

〇才能の認証 
 この映画において感動の要素としてあるのが、審査員のアマンダという人の存在。ポールの歌を聴き、才能を目の当たりにするとともにその才能を認証し、感心する姿が表に現れてしまう。そこで我々はポール・ポッツという才能が世間に認められたのだと理解する。そこに我々は感動を覚えるのである。我々は誰もが何かしらの才能を持っているのだろう。それが発現・発見されるかの問題だけで。そしてそこに感動は生まれない。感動を生むのは、その才能の発現からの他者の認証、認識によるものが大きい。才能があるのにタイミングや環境などにより日の目を見ることがない。それがある日突然何かの巡り合わせで認められ、日の目をみることとなる。自分には才能が無いのかもというある種あきらめの感情や、日々の何かしらの努力がある日突然認められる。自分では当たり前と化していた行為(無価値とは言わないまでもある種義務化されたもの)が他者に理解され、認められる行為と言うのは何とも感動すること必至。あなたには価値があると、(自分だけでは不確かだった)自分の価値を認められているととれるからだ。この世の中において誰かに認められるという行為に飢えている人間が数多くいる。それの代償行為としてこういった映画は感動を生む。

 先に観客の歓声が巻き起こり、スタンディングオベーションするではないかと、そこで感動するのだという人もいるだろう。それも確かにある。しかし、世間一般の人々よりも世間から認められているある種異質な存在、御墨付きとでもいおうか。さらに言えば認められたという対価が必要になる。それは成功を約束された道か、莫大なる収益か、その他の何かかというのは人それぞれである。いや、私はポールの才能をいち早く見抜き、最初の一声で鳥肌が立ったと言う人もいることだろう。人はそれぞれに感性があり、感動するポイントも思うところも違う。それの基準となるのが感動するポイントに説明を加えたものだ。わかりやすく言いかえれば芸術家たちの作品に価値をもたらす鑑定人。とそれにお金を出すものの関係。それだけの価値があると認められることで初めてお金を出せる。一見どこがすごいのかなどわからないものが多数ある。そんなものに価値を与えてきた存在。それが浸透している・浸透させられた世界に生き、選別してきた者たち。そんな存在の認証こそが、一番に信用足るものいう意識が浸透してはいないだろうか。そんな者による才能の認証がもたらす我々への影響は、感動していいんだという了解と、感動すべきという誘導、さらには自分の知らない世界への介入や、非現実への誘いか。これが一番に我々に対して夢を膨らませる事象であることは間違いないだろう。故にこの映画では審査員による才能の認証が一番の感動のポイントと言える(私的見解ではある)。

〇疑念 
 最後の番組内の様子が当時のものとの併用(・・・多分)で違和感を感じざるをえない。盛り上がりに欠けるというか、噛み合いがないというか。映像的にも鮮明さが違うので尚更。もうどうせなら当時の映像全部埋め込めばよかったのにとも思ってしまうほどだった。 彼のドキュメンタリーは日本でも特集されているし、某動画投稿サイトにも蔓延している。それを何度も目にしている人にとっては、最後の最後で興ざめしてしまうのではなかろうか。ポール・ポッツの生きざまを描くのと、ポール・ポッツを演じたものの生きざまを描くのとごちゃごちゃにしてしまった感がある(わかりにくいかな・・・)。 
 あとはエンディング。ポール・ポッツご本人の映像を流してくれることに期待しすぎていて、観終わった後あっけらかんとしてしまった。 

〇最後に 
 ポールは数多くあったチャンスの中の一つのチャンスで成功者の階段を駆け上がった。誰しもがこのようなチャンスを大なり小なり経験しているのではなかろうか。さらには彼よりチャンスが多いかもしれないし、少ないかもしれない。そういった意味ではチャンスとは誰しもに平等に訪れるものとして何とも公平感が漂う。だからこそ希望を見出す。しかし、そのチャンスが過ぎさってしまえば何とも差別的世界が広がる。成功者と失敗者、勝ち組と負け組の世界だ。そういった組み分けは負け組のやっかみだったり、勝ち組の優越感だったりというものもあるかもしれない。お金というものが支配する世界で綺麗事は意味を為さない。 ワンチャンス、果たして掴みとることができるだろうか。

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