2015年2月3日火曜日

ブロークン(2012)

ブロークン[DVD]


~他人事~ 

〇はじめに 
 世の中とは理不尽だ。男と女、大人と子供・・・etcという区別が様々な偏見や差別を生んでいる。それを受け入れ、屈することこそが世間では大人になることだとぬかす。ふざけるな。まぁ、いろいろ事情が絡んでくるわけですけれどもね・・・。 

〇想起する作品 
「パンズ・ラビリンス」(2006)  
「偽りなき者」(2012) 

〇こんな話 
 糖尿病である少女の家族と関係者、青年リックの家族、キチガイ家族、の三者の関係性で浮き彫りになる世の中の真実とは一体。 
 愛という大きな括りの中に存在する様々な諸問題。生と死、家族、男と女、大人と子供、・・・子どもの性、いじめ・・・。あなたにはどれだけのものが見えているのだろうか。 そして主人公の少女の疑問を通してひたすらに投げかけられる問いに、あなたは答えられるだろうか。

 そこまで大きな問題ではないかもしれないが、様々な問題が身近に内包している様を決して他人事ではないとこの作品は映し出す。糖尿病の主人公は、健康体で未成年であるのにタバコを吸う兄弟に疑問を投げかける。彼らの遊び場はスクラップ置き場であり、背景に度々映し出されるそこでは常にユンボが作業をしている。日常生活の中に「なぜ?」という疑問が数多く転がっており、身近に危険が潜んでいる。そんな演出が数多く散りばめられている。

〇他人事 
 作品の流れとして、まず誰かしらの視点で、何かしらの出来事が描写される。第三者(傍観者)、被害者等による結果の部分、そして「なぜ?」という(主に主人公の)疑問が湧く部分だ。それの後追いとして、当事者、関係者ならびに加害者側の原因(動機)となる部分が映し出され、その出来事に意味が付加される。

 ある個人における他人事情の不鮮明・不透明(無関与、無関心?)さを見事に表現している。冒頭は青年が男に殴られるシーンを少女が目撃するというものだった。この場面を少し考えてみる。まず少女視点で描かれるわけだが、突然青年が近所の男に殴られた、という事実が映し出される。本当に突然である。何の前触れもなく、少女にとっては今まで話していた青年が、いきなりやってきた男に殴られるのである。男の情報は近所の者であるということくらいだ。頭に「なぜ??」が浮かぶことだろう。少女と青年の二人の視点からでは殴られる原因はまるでわからない。決して見えてこないのである。そしてある男の視点へと映る。青年を殴る動機を持っている、怒りの原因を唯一理解している男だ。共感できるか否かは別として、彼には彼なりの動機があったのだ。そして彼らのその後が描かれていくことで、この出来事は決して青年と男の間だけの問題ではなく、その者たちを取り巻く人間と環境が関係していた、ということが明らかになっていく。
 描写の順序としては、
1, 青年が男に殴られた = 結果及び「なぜ?」の部分
2, 男には青年を殴る動機があった = 理由となる部分
(実際のところ、青年には男に殴られる理由は無かった)
3, 彼らを取り巻く者たちの関係性が暴かれていく ← これが意味の付加となる

 こんな経験がありませんか。ある時ふと気付くと、こちらを何やら伺いながら、笑って会話をしている集団がいる。こちらには決してその内容はわからない。例え自分のことがネタにされていようともだ。知らないところで何かが始まっており、そして終わっている。
それぞれの視点で観るからこそ、筋が通り、意味が見出せる人と人との関係性や方向性。しかし、実際は映画のように全てが見えるわけではない。他人の会話を目撃し、こちらを見て笑っていたら、こちら側の利益になるような会話が為されていると判断するだろうか。何か悪口めいたことを言われ、笑われているのでは?と勘繰りはしないだろうか。気にしなければ何のことはない。しかし気になりだすと止まらない。そして勝手にイラついている。結局はどちらだったのかというのはわからない。決して見えてこない部分があるからだ。それが常である。そもそもこちらの事など話題にすらなっていないかもしれない。たまたま笑ったところで目が合っただけなのかも。
 人の行動には何かしらの理由があり、誰かしらに向いている。しかし自分という器だけではそれが見えてこない。だからこそ人と人の間には誤解が生まれ、起こるはずのない、起こるべきではない事が起きてしまう。さらには共感できるかどうかというのが、その者の行動に意味を見出す、要は相手を理解する上での障害になっている。

〇余談 
 それぞれに何かしらの事情があるにしろ、ある一家だけことごとく不幸になってほしくある作品である。しかし、痛い目に遭ってほしいと思っていた反面、そんな状況に彼らが置かれるのを見ると、何か気分が悪くなるのである。

〇最後に
 自分と他者との関係ってのは難しいものだ。皆仲良くなれば良いと思うのは当然だろうが、何分そのアプローチの方法が人それぞれ違ってくる。他人に構ってもらうために、気さくに話しかける人もいれば、黙り込む人もいる。親しげに話しかける人もいれば、怒りでしか表現できない不器用な人も存在する。そんな者たちがどうやって関係性を築いていけばいいのか。・・・と考えると関係性築く必要なくね?と思う人も出てくるし、敵対視する人も出てくるわけで。そりゃあぐちゃぐちゃしてしまうでしょうと。あなたはどこまで寛容になれますか?
ではでは・・・。

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