2015年3月25日水曜日

ランニング・マン(2013)

ランニング・マン [DVD]

~印象~ 


〇はじめに 
 原題が「THE JOGGER」
スピードアップしちゃってるな、勝手に。まぁ、ジョギングマンってあまり言わないし、かっこ悪く感じるしな。 
 「Jog」は記憶を呼び起こすという意味もあるのか。なるほどなるほど。こっちの意味だろう。 

〇こんな話 
 ジョギングしている男。左手の薬指には結婚指輪が光る。そんな彼が突然何者かに襲われることになる。現在と過去の出来事が交互に描かれ、見舞われている事態の真相に迫っていく。 

〇騙される心理 
 公私共にギクシャクしていた。仕事、結婚生活、女性関係、友人関係・・・etc 

 彼と関わる者を描き出すことで、彼に襲われる原因があったこと、そして彼がなぜ襲われているのか、という真相を探らせることが狙いであろう。そしてその心理に囚われた者が最後騙されると。



 公私混同、そして現実と妄想の混同。自分の都合の良いように人間は出来事を改変する。この作品は、自分が被害者であるという心理に囚われた彼の断片的な記憶を観せられていたに過ぎない。道路を歩いている亀を脇道に避けてやる彼。そして夜道を走る彼と、突然彼の近くで止まる車と、どちらが恐ろしい(悪い)ものに見えるのか。彼の立ち位置がどのようなものなのかという印象操作が序盤に為されているわけだ。後々、ただ座っているだけなのに、いきなり公園で小児性愛者とレッテルを貼られるような場面も。

――何より実際に彼が襲われている様子が描かれているわけですからね。そりゃ被害者視点で見てしまいますよ。彼を疑うべき要素の、最初のシーンなんて見てなかったですもん。わざとスタッフロール的なの入れてますね、これは。と、強がってみる。――

 断片的な彼の行動を観せられて我々は彼をどのような人間であると判断するのか。彼は悪くない、被害者であるという見解に、この限られた情報で勝手に達することだろう。故に、なぜ彼は襲われているのかという思考に陥ってしまう。彼の過去回想に登場する人物の中に犯人を見出そうとしてしまう。肝心の容疑者が外れていることなど忘れて・・・

 それを劇中で彼もやっていたわけだ。自分には決して非が無いという前提で。妻が素気ない、冷たい。営みがない。避けられてる気がする。「なぜなんだ??」という疑問を探りはじめる。彼には素気ない妻が、友人と楽しげに話すツーショットが時折映し出される。それが彼にはどのように見えていたのか。通話やメッセージという証拠も押さえた。自分が決して得られない情報を、手に入る限られた情報から勝手に補っていく。断片的な情報をつなぎあわせ辿りつく答え。浮気している。しかも友人とだ。いったい誰が悪いんだ?・・・・

*こんな感じの真相
 要は 「仕事を解雇されたことを、妻が浮気している所為にした」
 自分の知らないところで、自分の解雇という事実に動揺し、自分に対する反応が変化していく人々の様子から、妻が浮気しているという妄想を創り出した。
 そして自分の能力不足が原因による会社側の解雇という判断を認められず、自分の責任を回避しようと、妻と友人の浮気の所為だと思い込むことにした。
 解雇と浮気が勝手に結びつき、現実と妄想の区別がつかなくなり、猟奇殺人鬼に・・・



 被害者と思われていた彼に対して、徐々に違和感を感じさせるようにもなっている。友人の冗談を真に受ける様子や、家族を思い誘惑に屈しない誠実な彼も伏線だ。一見一般的な夫としての責任感にも見えるが、異様なほどの執着心ともとれてしまうのだ。先ほどの小児性愛者というレッテル貼りも実はこっちなのかもしれない。彼を被害者側とも見られるのだが、公園にいる子供の誰の親でもない大人の男が、遊んでいる子供を見てニヤニヤしていたらどのような人間に見えるのか。彼側に偏った視点に疑問符を与える要素でもあったわけだ。

 情報なんてのは見方やタイミングでいくらでも変化する。しかし、良いものが悪く見えたり、悪いものが、より悪く見えてしまったりという傾向が強い。悪い方に見えやすいというのは、他人からの見られ方を気にするからか、プライドが高いからか。この辺のことがレストランでの友人との会話の中で話されている。ここが彼の見え方(見られ方)の分岐点だ。そしてこの作品で言いたいことの全てだ。


〇最後に
 自意識過剰な被害妄想野郎がぶちギレちゃった話であるわけだが、集団の中における自分という立ち位置を気にしている人間は数多くいるわけで。自分はどう見られているのかということを気にしてやまない人は、良く見られたいと思うこと必至で、悪いイメージを払拭しようと悪いイメージに囚われ、悪い方に悪い方に考えてしまうようになる。彼予備軍なわけだ。我々はいつ爆発するかわからない爆弾に囲まれて生活している。そして自分自身も爆弾かもしれない。彼にならないように、どこかしらで何かしらの心の整理や発散をせねばなるまい。気をつけられたし。

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